遅かれ、早かれ、恋になりまして。

一気に話してしまって、最後に息が切れる。沈黙が一瞬落ちる。その間がやけに長く感じた。すると、電話の向こうで静かに声がした。


『今どこですか』


その一言が、不思議なくらい落ち着いていて、私は反射的に答えていた。


「会社です……まだ残ってます」

『分かりました。今から行きます』

「え……?」


思わず聞き返すより早く、通話は一度切れる。私はスマホを握ったまま、しばらく動けなかった。

今から来るって、どういうこと……?

誰もいないオフィスの静けさの中で、さっきまでとは違う意味で心臓が速くなる。時計を見ると19時15分だ。

普通の会社なら、とっくに就業時間は過ぎている。

有馬さんはもう退勤して家にいたのかもしれないのに。

そんな時間に、私は。

課長ではなく、あろうことか有馬さんに助けを求めてしまった。

その事実に気づいた瞬間、一気に後悔が押し寄せる。

なにしてるの、ほんとに……だめでしょ、こんなの。

さっきまでどうしようでいっぱいだった頭が、今度は別の意味で冷えていく。

同じ会社の人間ならまだしも、取引先相手の有馬さんになんて、本来なら絶対に頼ってはいけない状況だ。考えれば考えるほど、最悪の選択をした気がしてくる。

私は無意識にスマホを握り直した。

どうしよう、今のなしって言える?いや無理だ、もう来るって言ってたし…。
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