遅かれ、早かれ、恋になりまして。
修正反映完了の通知が届いたのは、夜9時を少し過ぎた頃だった。
「……反映、確認できました」
私が画面を見ながら呟くと、有馬さんも小さく息を吐いた。
「これで問題なさそうですね」
その一言を聞いた瞬間、全身の力が一気に抜ける。張り詰めていた神経がようやくほどけて、私は椅子にもたれたまま大きく息を吐いた。
終わった。本当に、なんとか間に合った。
その安堵に浸りかけた瞬間だった。
ふと視界に入ったテーブルの上のスマホを見て、血の気が引く。
「……っ、佳奈子!!」
慌てて手に取って画面を開く。通知欄には、佳奈子からのメッセージが大量に溜まっていた。
〈ヤヨーー?〉
〈ついさっき気になって会社戻ったんだけど、もしかしてトラブル?〉
〈男の人といい雰囲気だったから話しかけずに帰ってきちゃったんだけど〉
「うそ……最悪……」
思わず頭を抱える。完全に忘れてた。今日、佳奈子と飲みに行く約束してたんだった。
しかも、いい雰囲気ってなに見たの!?
一気に別方向の冷や汗が出てくる。私は慌てて佳奈子へ電話をかけた。数コールで繋がった瞬間、待ってましたと言わんばかりの声が飛んでくる。
『やっときたーーーー!!』
「ご、ごめん佳奈子!!ほんとにごめん!!」
『いや全然大丈夫なんだけど!それより、あの人誰なの!?超かっこいいじゃん!』
「あー…えっと…」
反射的に振り返ると、少し離れた場所で資料をまとめている有馬さんの姿。
うっ…今ここに本人がいるのに、佳奈子になんて言えばいいんだろう…!
『えっ、待って、もしかしてその人が有馬さん!?』
「佳奈子、声大き——」
有馬さんに聞こえちゃったら、どうするの!