遅かれ、早かれ、恋になりまして。

1日目の配信が終わったのは、思っていたより遅い時間だった。

数字は一応、安定している。大きな崩れもない。致命的な問題もない。それなのに、安心したというより、ようやく息ができるようになっただけだった。

ずっと画面を見続けていたせいで、視界の奥にまだグラフの残像が残っている気さえする。


「……終わった」


画面を閉じながら、小さくそう呟く。

終わった、って言ったのに、なんでまだ終わってない感じがするんだろう。肩が重い。首も痛い。たぶん変な姿勢のまま何時間も固まっていたせいだ。でもそれ以上に、ずっと張っていた神経がまだほどけきっていない感じがする。


ミスはなかったはず。数字も悪くない。むしろ順調なほう。でも、それなのに落ち着かない。うまくいってるときほど怖いのってなんでなんだろう。どこかで急に落ちる気がしてしまう。


背もたれに背中を思う存分預けて、天井を見上げた。白い天井の模様がぼんやり揺れて見えて、目の奥が少しだけ疲れているのを自覚する。


「………有馬さん」


ぽつり、名前を呼んでしまう。声に出るつもりなんてなかったのに、気づいたら勝手にこぼれていた。言った瞬間、自分でも一瞬止まる。

胸の奥がひゅっと縮む感じがして、勢いよく首を振った。

違う違う違う、とにかく違う。

周りを見渡す。誰もいない。デスクの並ぶフロアは静かで、キーボードの音すらほとんどしない時間帯だった。


……よ、よかった!誰もいない!危ない、危ない。
もう、ほんとしっかりしようよ、私…。


さっきまで配信のことで頭がいっぱいだったはずなのに、気を抜くとすぐこれだ。
仕事の数字とか、CPAとか、CTRとか、ちゃんと考えなきゃいけないことは山ほどあるのに、隙間から変なものが入り込んでくる。
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