遅かれ、早かれ、恋になりまして。

金曜日にあんなことがあってから、土日もずっと考えてしまっていた。寝ても起きても、気づくと同じ場面が浮かぶ。何回も思い出してしまう。もう、浸食されている、完全に。考えないようにしようとするほど、逆に思い出してしまう。


「……うぅ」


あーもう!

全部全部、有馬さんのせい!もしこの配信うまくいかなかったら、有馬さんのせい!絶対そうなんだから!
言ってやるんだから!ちゃんと文句言ってやるんだから!

心の中では謎に強気なのに、現実の私はあの人の前に立つと一気に何も言えなくなるくせに。


少し勇気を振り絞ってみても、あっちはゆうに私の想像を超えてくる。

仕事のときの、有馬さん。仕事以外の、有馬さん。

あの夜の、少しだけ柔らかい声。思い出そうとすると、全部が勝手に鮮明になっていく。


『明石さんは、俺のことをどんな人間だと思ってるのか分からないけど』


その言葉が、今でも頭の中で残っている。

あのとき、有馬さんは私の目線に合わせるように少しかがんで、見上げていた視界が、同じ高さになった。

見上げなければいけないほどの身長差が、たったそれだけの動きで、簡単に同じになるなんて思ってなかった。


『誰にでも、優しいわけじゃないよ』


有馬さんの真ん中で分かれた前髪が、夜風に少し揺れて、その奥のアーモンド形の瞳に映っている私が……。


「…って、何考えてるんだろ」


我に返って、勢いよく視線をデスクに落とす。

だめだ、ほんとに。いつの間にこんな方向に脱線してるの。ちゃんとしようよ。

そう思えば思うほど、逆に頭の中から消えないのが一番たちが悪い。


……ほんと、有馬さんのせいなんだから。
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