遅かれ、早かれ、恋になりまして。
「なんだろう…顔は好みが分かれるタイプだと思うんだけど…」
そう言いかけたところで、タイミングよく店員さんが「失礼します」と声をかけながらパスタを運んできた。
目の前に置かれる、期間限定のパスタ。湯気がふわっと立ち上って、さっきまでの会話の続きが一瞬だけ途切れる。
「でも、惹かれたんだ?」
佳奈子はフォークとスプーンを使って、くるくるとパスタを巻きながら何気なく聞いてくる。
「惹かれた…?うーん…そうだね」
私は少しだけ考え込む。
惹かれた、という表現が正しいのかどうか分からない。目を奪われた、と言ったほうが近い気もする。気づいたら見ていた。ただそれだけ。
そんな、ほとんどどうでもいいようなことを頭の中で転がしながら、私もフォークにパスタを巻いた。
「珍しいね、ヤヨがそんなこと言うの」
「え?」
佳奈子の言葉に顔を上げると、彼女はなぜか少し嬉しそうに笑っていた。
「ヤヨはね。遅かれ早かれ、その人のこと好きになると思うよ」
「…………え!?」
「だって、タイプじゃない人に惹かれるって、相当でしょ」
す、好きになる…!?私が?今日初めて電車で会った、職場も名前さえも知らない人のことを?もう会うこともないかもしれない人のことを?名探偵佳奈子、それはちょっと早とちりではないか?