遅かれ、早かれ、恋になりまして。

八木くんと入ったのは、いつも佳奈子と一緒に来ている会社近くのイタリアンのお店だった。

私は慣れた足取りで店員さんに案内されながら、ふと後ろを振り返った。すると八木くんが、店内をきょろきょろ見回している。


「どうしたの?」


席に座りながら聞くと、八木くんはまだ周囲を見ながら、不思議そうに呟いた。


「初めて入ったんで、外から見るのとだいぶ雰囲気違うなと思って」

「え?初めてきたの!?」


思わず声が少し大きくなる。

だってここ、会社の目の前だよ!?うちの社員なら絶対一回くらいは来たことあると思ってた。というか、ランチ難民になったら最終的にみんなここ来るイメージなんだけど。

八木くんは、そうですけど?とでも言いたげに首を傾げる。


「何かありました?」


逆に不思議そうに聞き返されて、私は一瞬だけ言葉に詰まった。


「いやー……ちょっと反省中」


ぽつりとそう呟くと、八木くんが「はあ?」みたいな顔をする。

同じ部署の先輩として、もっと八木くんのこと気にかけてあげるべきだったかもしれない。そもそも私、八木くんが普段どこで誰と昼食べてるのかすら知らない。

仕事では毎日隣にいるのに、そういう当たり前のことを全然知らなかったんだなって、今さら気づいてしまう。

はぁー、と小さくうなだれるみたいに頬杖をつきながら、目の前でメニューを見ている八木くんを見つめる。真剣にメニューを読んでいる横顔は、仕事中より少しだけ幼く見えた。

なんか、申し訳ない。ずっと気づかなかった。
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