遅かれ、早かれ、恋になりまして。
「ごめんね、八木くん」
「何がですか?それより、美味しそうですね、ここ」
八木くんはメニューを見ながら、ほんとになんでもなさそうに言う。その様子に、私は余計にしょんぼりした気持ちになった。だって本人は気にしてなさそうなのに、私だけ勝手にちゃんと先輩できてなかったかも……って落ち込んでるんだもん。
「八木くん、いつもはどこで食べてるの?」
「ほぼ社食ですねー。同期がそこに集まるので」
「一人じゃないんだ?」
「まあ、仕事たまってたらデスクで食べますけど……基本、他部署の同期と食べてます」
同期。ああ、そういえば営業部の同期は八木くんの他に女の子2人だ。男一人だから、肩身狭いのだろうか。
なんとなく、女子の会話に付き合わされてる図を想像してしまって、ちょっとだけ可哀想になった。
というか、そんなことすら今まで考えたことなかった自分にじわじわダメージがくる。
あー……ほんとごめんね、八木くん。先輩なのに、全然見れてなかったかもしれない。私が勝手に頼れる後輩って認識して、甘えてた部分もある気がする。
仕事できるし、要領いいし、なんだかんだ放っておいても大丈夫そうで。でもよく考えたら、八木くんだってまだ入社してそんなに経ってないんだよね。
「……先輩、また変なこと考えてます?」
不意にそう言われて、私はハッと顔を上げた。
「えっ」
「顔に出てます」
そんなに!?慌てて頬を触ると、八木くんが小さく笑う。
「ほんと分かりやすいですよね、先輩」
その言い方がちょっと楽しそうで、私はますますいたたまれなくなる。もうやだ。後輩に気を遣わせてる気しかしない。