遅かれ、早かれ、恋になりまして。
少しすると、私のパスタと八木くんの追加のパスタも運ばれてきた。テーブルの上が完全に茶色と炭水化物で埋まりかけていて、なんだか見ているだけで満腹感がある。
「わ、いい匂い……」
結局選んだのは、期間限定のきのこのクリームパスタ。
八木くんはもう普通に食べ始めていて、フォークを持つ手が止まらない。いや、ほんとによく食べるな。
「そういえば、先輩すみません」
「ん?」
パスタを巻きながら顔を上げると、八木くんが思い出したみたいな顔をした。
「朝、課長から金曜日NEXERAと懇親会するって聞いてたんですけど、言うの忘れてました」
「えー……あぁ」
そういえば、有馬さんも電話で言ってた。楽しみですね、って。あの声を思い出した瞬間、胸の奥が変にざわつく。やめてやめて、今はパスタに集中。
「18時30分にこっちの駅前の居酒屋らしいです。あの、2階の、外に階段あるとこの……名前忘れました」
「あー、分かるかも。赤ちょうちんっぽいやつ?」
「あ、それです」
八木くんが頷きながらパンを食べる。
…………懇親会、かぁ。仕事の延長みたいなものとはいえ、実質飲み会だ。しかも今回は向こうの担当者たちも来る。つまり当然、有馬さんもいる。そう考えた瞬間、パスタを巻く手がちょっと止まった。
……いや、待って。普通に嫌かも。いや、嫌じゃない。むしろ会いたい。でも会ったら絶対落ち着かない。
そう思った瞬間、なんだか急に変に緊張してきてしまって、私は慌ててパスタを口に入れた。
熱っ。
「っ、あつ……!」
「なにやってるんですか先輩」
八木くんが呆れたみたいに笑う。
「いや、ちょっと考え事してて……」
「懇親会のことですか?顔に出てますよ」
「……。」