遅かれ、早かれ、恋になりまして。

有馬さんは、どういうつもりで、楽しみですね、なんて言ったんだろう。 あれはただの社交辞令?営業トーク? たぶんそう。絶対そう。 なのに私は、そのたった一言をまだ引きずってる。


「先輩、なんかソワソワしてません?」

「えっ!?……あー……そう?」

「はい。なんか挙動不審ですよ」

「え~?気のせいじゃないかなー、ははは……」


愛想笑いを浮かべながら、私は慌ててパスタを口に運ぶ。だめだ。絶対いま変な顔してる。自分でも分かるくらい、さっきから体温が上がりっぱなしだった。

有馬さんの顔が頭に浮かぶたびに、心臓が勝手に騒ぐ。ほんとやめてほしい。


「なんかあったんですか?あの人と」

「……あの人って?」

「有馬さんですよ。とぼけないでくださいよ」

「……っ」


名前を聞いた瞬間、フォークを持つ手がぴたりと止まる。

だめだって。そんな直球で来ないで。思い出しちゃうから。

『誰にでも、優しいわけじゃないよ』って、少しかがんで目線を合わせてきた有馬さんの顔。近かった距離。静かな声。アーモンド形の瞳。さっき電話越しに聞こえた、少しくぐもった低い声まで蘇ってくる。


「俺が初めて先輩の前に有馬さんの名前出した時のこと覚えてます?先輩が倒れた次の日。有馬さんと仲いいんですか?って聞きましたよね」

「……そう、だね」

「そのときから……いや、違うな。もうずっと前から、気づいてましたよ」


え?

私はきょとんと八木くんを見る。八木くんはフォークを皿に置いて、少しだけ真面目な顔になった。
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