遅かれ、早かれ、恋になりまして。
「な、なにを?」
「先輩が、有馬さんのこと特別に見てるってことくらい」
「いやいやいや、何言って、」
慌てて否定しようとしたけど、八木くんは「分かりますよ」と小さく笑った。
「だって俺、ずっと先輩見てましたから」
その言葉に、私はぱちぱち瞬きをする。
なんだろう。びっくりした。でも、それ以上に先に来た感情は、“ああ、この子ほんとよく見てるなぁ”だった。
「入社してすぐ課長に言われました。先輩のことよく見て学べって」
「え、そんなこと言われてたの?」
「言われてましたよ。先輩、いろんな人に仕事押し付けられてるし、絶対損するタイプだなーって最初思ってました」
「ひどいなぁ」
思わず笑うと、八木くんも少し笑う。
「でも、俺が困ってたら絶対手伝ってくれるし、なんだかんだ周り見てるし。ふわふわしてるくせに、プレゼンになると急に強いし」
「ふわふわってなに」
「褒めてます」
絶対褒めてない。そう思うのに、なんだか少し嬉しい。
「取引先相手でも全然引かないし、課長も先輩のことかなり評価してるし。だから俺、結構先輩見て勉強してるんですよ」
そんなふうに言われるなんて思ってなくて、胸の奥がじんわり温かくなる。
私なんて、毎日失敗しないように必死なだけなのに。ちゃんとしてるように見えてるんだ。しかも八木くんに。なんか、それがすごく可愛く感じてしまった。