遅かれ、早かれ、恋になりまして。
「だから、何が言いたいかというと……」
八木くんは少しだけ考えるみたいに視線を逸らしてから、また私を見た。
「有馬さんより、俺のほうが先輩のこと分かってるってことです」
「……ふふっ」
思わず笑ってしまった。
拗ねたみたいな顔。ちょっとむくれた口元。この顔は、犬っぽい。
俺のほうが見てる、ずっと、なんて。嬉しい。単純に、すごく嬉しい。こんなふうに見てくれてる子がいたんだ、って。私、自分のことなんて全然見えてなかったのに。
「やきもち焼いてくれてるの?」
からかうみたいに笑いながらそう言うと、八木くんは「…そういうのじゃないです」って、また少しムッとした顔で小さく呟く。
「八木くん、私のこと舐めてるよね?」
「まあ、基本そうですね」
「生意気だな?」
八木くんは普通にパスタを食べ始めていて、その態度が自然すぎて、なんだか笑ってしまう。
八木くんにとって、私がちょっとでもいい先輩として映っているなら、それだけで十分だった。完璧じゃなくても、ちゃんとしてなくても、そう思ってもらえてるならいいかもしれない。
そんなふうにぼんやり考えながら、八木くんの言葉を頭の中でゆっくり反芻していると、不意に別の声が重なる。
『明石さんは、もっと自信もっていいと思います』
一瞬、心臓がきゅっと縮むみたいに反応したけれど、私はそれに気づかないふりをした。