遅かれ、早かれ、恋になりまして。
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「お先に失礼しまーす。お疲れ様でーす」

「お疲れ様でーす」


フロアのあちこちから重なる声。デスクの上では、誰かのパソコンがスリープに入る音が小さく鳴って、蛍光灯の白い光だけがやけに冷たく感じた。

私はカタカタとキーボードを打っていた手を止めて、なんとなくパソコンの右下に視線を落とす。

17時5分

……あ、もうこんな時間。

窓の外は薄暗くなり始めていて、ビルの隙間から見える空は夕焼けを通り越して鈍い藍色になりかけていた。


「先輩、お疲れ様です」


不意に聞こえた声に顔を上げる。見ると、八木くんが立ち上がって鞄を肩にかけていた。


「あ、八木くんお疲れ様。気をつけてね」


ここで会話は終わるはずだった。いつもみたいに「じゃあお先です」で終わって、私はまた画面に向き直るはずだったのに。


「ふたりごめん!ちょっとこれお願いしていい?」


バタバタと慌ただしい足音と一緒に、外回りから戻ってきた課長の声がフロアに響いた。振り向くと、ネクタイを少し緩めた課長が、大量の資料を抱えたままこちらに来るところだった。今日は珍しく顔に疲れが出ている。額にはうっすら汗が滲んでいて、いつも整っている髪も少し乱れていた。


「これ戻すのと、あとこっち軽く整理しておいてもらえる?ほんとごめん」


どさっとデスクに置かれたのは、明日の会議用らしい分厚い資料束と、資料室に返却するファイルの山。
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