遅かれ、早かれ、恋になりまして。
「先輩、効率悪いですよ」
「うっ……」
八木くんが呆れたように私のデスクへ近づいてくる。そしてそのまま、私のパソコン画面を覗き込んだ。
画面の周りには、色とりどりの付箋がびっしり貼られていた。“〇日まで提出”“あとで確認”“修正必要”“絶対忘れない”。自分でも笑えるくらいカオスな状態だ。
八木くんに効率が悪いと言われたら、さすがに何も言い返せなかった。
だって実際、その通りだから。
毎日のように残業して、帰る頃にはヘトヘトになって、それでも次の日にはまた同じように仕事が溜まっていく。自分でも分かってる。やり方が上手くないんだって。でも、だからといって簡単に変えられるわけでもなくて。
「俺より仕事量多いので、大変なのは分かりますけど」
八木くんはそう言いながら、私のデスクに貼られた付箋をひとつひとつ眺めていく。
「うーん……どうしても、気になっちゃうんだよね……」
今日中に絶対終わらせなきゃいけない仕事なんて、本当は一つもない。明日でも間に合う。来週でも問題ない。頭ではちゃんと分かってる。
でも、“もしも”を考え始めると止まらなくなるのだ。
大丈夫かな。期限過ぎたりしないかな。誰かに迷惑かけたらどうしよう。確認漏れがあったら?ミスしてたら?そんなことを考えているうちに、結局手をつけてしまう。
やっておけば安心だから。終わらせておけば怖くないから。そうやってずっと、自分を追い込むみたいに仕事をしてきた。良くないって、自分でも分かってる。
でも、怖いのだ。失敗するのが。
「先輩って、責任感強いですよね」
八木くんがぽつりと言う。
「……ただ心配性なだけだよ」
苦笑しながら返すと、八木くんは少しだけ考えるみたいに黙った。