遅かれ、早かれ、恋になりまして。

ふと視線をずらして、有馬さんのほうを見る。やっぱり自然に会話の中心にいて、田島さんと課長の間に入りながら、場が止まらないようにうまく話を回していた。相手が話しやすいように相槌を打って、時々笑わせて、でもちゃんと本題にも戻す。その空気の作り方が本当に上手い。

すごいな……。営業として、こういうところも見習わなきゃ。


「有馬さん、凄いですよね」

「……そう、ですね」


できるだけ自然を装ったけど、自分でも少し声が硬かった気がする。田辺さんは気づいていないみたいで、そのまま笑いながら話を続けた。


「私の2つ上だとは思えないくらい優秀な人で」


その言葉に、頭の中で一瞬計算する。2つ上。ということは――有馬さん、28歳なんだ。


「若いですね。なんでもできるので、てっきりもう少し上かと……」

「そう思いますよねー」


田辺さんがうんうんと頷きながら、八木くんが取り分けてくれた枝豆を口に運ぶ。私もつられるように枝豆をつまんだけど、なんだか味がよくわからなかった。

28歳。もっと上だと思ってた。

落ち着いてるし、周りを見る余裕もあるし、話し方も大人で、正直30代前半くらいかと思ってた。なのにまだ28。しかも、高瀬課長と並んで話してても全然引けを取らない。

…すごい。ほんとにすごい人なんだなって、改めて思う。同時に、少しだけ遠く感じた。有馬さんが笑う。グラスを持つ。相槌を打つ。その全部を目で追ってしまう。


「有馬さんて、見た通りかっこいいじゃないですか。仕事もできるし、彼女もいないらしいし、社内では男からも女からも取り合いですよ」


田辺さんはそう言いながら、ジョッキを傾けてビールをぐびっと勢いよく飲んだ。


「まあ、そうですよね。気持ち、分かります」


わかりたくなんかないのに。ほんとは、そんな話聞きたくないのに。でも、わかってしまう。目を引くくらい整った顔で、仕事もできて、しかも周りへの気遣いまで自然で。頼りたくなるし、気づけば目で追ってしまう。そんなの、私だけじゃないに決まってる。

そう思った瞬間、胸の奥がじわっと重たくなって、私は誤魔化すみたいにビールを口に流し込んだ。苦い。なんか今日はいつもより苦く感じる。
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