遅かれ、早かれ、恋になりまして。

「どう?」


不意に、有馬さんがこっちを見た。


「ちょっと幻滅した?」


軽く笑うみたいに、そんなことを言う。

アルコールが回っているせいなのか、頬がずっと熱い。さっきから体の内側だけがじんわり火照っていて、冷たいはずの水槽の光までぼんやりして見える。その中で、有馬さんだけは妙にくっきりしていた。

横顔。長い指。グラスを持つ手。いつもは鋭く見えるアーモンド形の瞳が、今は少しだけ柔らかく丸まっていて、力が抜けたみたいに見える。


その顔を見た瞬間、あ、と小さく息が止まった。

まずい。って、

頭より先に体が理解した。


好きだ。どうしようもなく、この人が好きだ。


本能みたいに、説明なんか一切できないまま、ただそれだけが胸の中に落ちてくる。

この人がいい。この人が欲しい。気づいたら、そんなことを思ってしまっていた。さっきまでの知りたいとか近づきたいとか、そんな綺麗な言葉じゃない。もっと、単純で、どうしようもない願いだった。

私を見てほしい。逸らさないでほしい。

ほんの少し前まで、この人の視界に入るのも怖いと思っていたくせに、今はその真逆を願っている。全部矛盾してるのに、それでも止まらない。


好き。

有馬さん。

好き。


認めた瞬間、何かが崩れたみたいに、視界が一気に滲んだ。
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