遅かれ、早かれ、恋になりまして。

「俺は……朝も、昼も、夜も。理由がなくても、会いたい」


その言葉と同時に、有馬さんの指先がそっと私の髪に触れる。耳にかかった髪を、優しく避けるみたいに掬われた。長い指。少し低めの体温。その全部がリアルで、触れられた場所から熱が広がっていく。

有馬さんも、同じだったんだ。

会いたいって思ってくれてた。忙しい毎日の中で、それでも私を思い出してくれてた。その事実が、胸が苦しくなるくらい嬉しかった。好きな人に想われるって、こんなにも幸せなんだ。私は今さらみたいに、それを知った。


「面倒くさいことやりたくないって言ったけど、明石さんは別。ほかに気になることある?」


この際、付き合っていくうえで擦り合わせしようよ、と有馬さんが言う。ちゃんと向き合おうとしてくれてる感じがして、胸がじんわり熱くなる。


「……じゃあ、一個聞いてもいいですか?」


そう言うと、有馬さんは「どうぞ」と頷いた。私は少し迷ってから、ずっと気になっていたことを口にする。


「……元カノに、本当に未練ないですか?」


その瞬間、有馬さんがぱちりと目を丸くした。最近分かってきたけど、有馬さんって思ってたよりずっと表情が動く。クールな人だと思ってたのに、案外分かりやすい。


「……もしかして、気にしてた?」


少し意外そうに聞かれて、私は素直に頷いた。だって、あの時。バーで元カノの話をした時の有馬さん、すごく切なそうに見えたから。


「音楽が聴けないっていうよりは……ある曲を聴くと、思い出してイライラするんです」

「イライラ……?」

「おすすめされた歌手のライブに、元カノが浮気相手と行ってたの思い出すので」


一瞬、ぽかんとしてしまう。

……え。そっち?

すると有馬さんは、ふっと肩を揺らして笑った。


「だから、心配ないですよ」


そう言いながら、ぽん、と優しく頭を撫でられる。その手つきが自然すぎて、余計にドキドキした。

……よかった。心の底から、そう思う。
私ばっかり安心させてもらってる気がして、今度は私が聞き返した。
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