遅かれ、早かれ、恋になりまして。

ロビーで少しの間待っていると、予想通り10時ぴったりにNEXERA株式会社の三人が姿を見せた。

エントランスの自動ドアが開いて、スーツ姿の三人がこちらへ歩いてくる。その先頭にいるのは田島さんだ。やっぱり時間に正確だな、なんてぼんやり思いながら、私は背筋を伸ばした。


「おはようございます。今日も、よろしくお願いします」


できるだけいつも通りの声で挨拶をする。田島さんは穏やかに会釈を返し、その後ろに続く二人も軽く頭を下げた。
その流れの中で、私はほんの一瞬だけ視線を動かす。ちら、と。
自然を装うみたいに、その後ろにいる有馬さんへ視線を向けた。

——仕事モードの顔、だ。

今朝、電車で見た有馬さんとはまるで違う。営業として外向きに整えられた表情。


私は小さく息を吐いた。

落ち着け。今は仕事。朝のことも、寝不足も、余計な感情も全部置いていかないと。そう自分に言い聞かせながら、私は三人を会議室へ案内する。

廊下を歩く間、ヒールの音だけが一定のリズムで響いていた。

前回すでに名刺交換は済ませているため、今日は余計なやり取りもなくスムーズだ。

会議室に入り、それぞれが席へ着く。資料を整える音、ノートパソコンを開く音、小さなキーボード音。

私は自分の席へ座りながら、一度だけ深呼吸をした。

大丈夫。ちゃんと集中できる。そう思ったタイミングで、高瀬課長が軽く視線を上げる。


「それでは、本日もよろしくお願いします」


その一言を合図に、二回目の打ち合わせが始まった。
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