遅かれ、早かれ、恋になりまして。
「それでは、本日の内容で一度社内確認させていただきます」
田島さんが資料を閉じながらそう言って、小さく頷く。その言葉を合図にするみたいに、会議室の空気がゆっくり緩み始めた。
私はノートパソコンを閉じながら、小さく息を吐いた。
終わった。途中、何度か頭がぼんやりしかけたけれど、大きなミスはしていない……はず。
高瀬課長が隣で「本日はありがとうございました」と落ち着いた声で挨拶をすると、NEXERA側の三人も立ち上がる。
「ありがとうございました」
私もそれに続いて頭を下げた。
資料を抱えながら立ち上がると、一瞬だけ視界が揺れる。寝不足のせいだ。だめ、しっかりしないと。
私は軽く息を整えてから、三人をロビーまで案内するために会議室の扉を開けた。廊下へ出ると、オフィス特有の静かな雑音が戻ってくる。
遠くで鳴る電話、キーボードを叩く音、誰かの話し声。その中を、私は少し前を歩きながらエレベーターホールへ向かった。背後にNEXERAの三人の気配を感じる。
なぜか、その中でも有馬さんの存在だけは妙にはっきり分かってしまう自分が嫌だった。
エレベーターが到着し、全員で乗り込む。閉まる扉。狭い箱の中に静かな空気が落ちる。田島さんと高瀬課長が次回のスケジュールについて軽く話している横で、私はできるだけ気配を消すみたいに立っていた。
すると、不意に隣から小さな声が落ちてくる。