遅かれ、早かれ、恋になりまして。

気が付くと、病院だった。

視界いっぱいに広がるのは白い天井と、淡い黄色のカーテンの色。消毒液の匂いが鼻の奥に残っていて、そこでようやく現実に引き戻される。視線をゆっくり下げると、左腕には点滴の針が刺さっていた。

細いチューブが伸びているのを見て、ようやく思い出す。

私、タクシーに乗って……それから、どうやってここまで来たんだっけ。


「明石さん、カーテン開けますね~」


近くから声がして、看護師さんがカーテンを少しだけ開く。


「もう点滴終わりますからね」


その言葉に、ぼんやりと頷くしかできない。

そういえば、有馬さんはもう帰ったのだろうか。結局、最後まで迷惑をかけてしまった。仕事中に倒れかけて、タクシーまで付き添ってもらって、病院まで。

彼の前ではちゃんとしていたいと思っていたのに、全部崩れてしまった気がして、胸の奥が少し重くなる。


「はい、お疲れさまでした。少し休んだら帰って大丈夫ですよ」


診察室で医師からは貧血と疲労だと簡潔に告げられた。
やっぱり、ただの寝不足じゃなかったらしい。


待合スペースに戻ろうと廊下を歩くと、視界の先に見覚えのある姿があった。
ソファに座っている、八木くんだった。


「気分どうですか?」

「だいぶマシになったよ」

「まじで勘弁してくださいよ…」


八木くんは前髪をクシャっと指で触って、小さく息を吐く。

座りってください、と軽く手招きされて、私はゆっくりと八木くんの隣に腰を下ろした。
白い照明の下で、ようやく少しだけ呼吸が落ち着いていくのを感じる。
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