遅かれ、早かれ、恋になりまして。

私はそのまま午後休をもらって、タクシーで一人暮らしのアパートへ帰った。

病院を出た頃には、さっきまでの重たい体がだいぶ楽になっていて、点滴ってこんなに効くんだ、とぼんやり考えるくらいには余裕が戻っていた。

バッグから鍵を探して、いつもの部屋のドアを開ける。
私は靴を脱ぐのもそこそこに、そのままベッドへ倒れ込んだ。柔らかいマットレスに体が沈む。

休みをもらったはいいけれど、正直やることなんて何もない。寝ればいいのに、頭だけが妙に冴えてしまって眠れそうにもなかった。

私はぼんやりしたままスマホを手に取る。
画面を開いた瞬間、通知欄に並んだ名前に小さく目を見開いた。佳奈子からの連絡が何件も入っている。


〈大丈夫!?〉

〈病院行った?〉

〈今ひとり?〉


メッセージが並ぶたび、胸の奥が少しだけ温かくなる。部署だって違うのに、誰から聞いたんだろう。やっぱり、あのロビーにいた人たちの誰かかな。
そこまで考えた瞬間、またじわっと顔が熱くなる。私は慌てるみたいに視線を落として、短く返信を打ち込んだ。


〈念のため、お休みもらいました。心配してくれてありがとう〉


送信ボタンを押すと同時に、スマホを胸の上に置く。
仰向けになって目を閉じる。すると、思い出したくないのに、鮮明に浮かんでくる。

細身なのに意外としっかりしていた肩。支えられたときの体温。ほんの少し冷たかった指先の感触。すぐ近くで聞こえた低い声。
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