遅かれ、早かれ、恋になりまして。
「えっと、ごめん。急に、追いつかないよね」
「いやいや……まあ、追いつかないけども」
佳奈子はそう言って、頭を抱えるみたいに額へ手を当てた。
「情報量多すぎるんだけど?」
私は苦笑いするしかない。だって、本当に全部ここ一週間以内のことなのだ。たった数日。なのにその数日で、毎日毎日心が落ち着かなくて、感情ばかり忙しなく揺れている。
朝の電車で見つけて、気になって、仕事で再会して、話すようになって。今日なんて、倒れたところを支えられて、病院まで送られて。情緒が追いつくわけがない。
佳奈子はしばらく「すご……」と呟きながら天井を見ていたけれど、やがて立ち上がると冷蔵庫へ向かった。
「はい、とりあえず水分補給」
そう言って渡されたポカリを、私は「ありがと」と小さく言いながら受け取る。冷たいペットボトルが火照った手に気持ちよかった。
キャップを開けて、一口飲む。乾いた喉に冷たい液体が落ちていって、少しだけ落ち着く気がした。
「会社にいたら、いつか私もその人に会えるってこと?」
突然そんなことを言われて、私は目を瞬かせる。
「う…ん?タイミングよければ?」
「ヤヨの好きな人かー、楽しみ」
「ブッ!」
思いっきりポカリを吹き出した。
「ちょ、ちょっと!汚ーい!」
「好きって……!」
私は慌てて口元を押さえる。顔が一気に熱くなるのが分かった。
「有馬さんのこと、そういう風に見たことないから!」
そう。好き、とか、そういうのじゃない。たぶん。いや、分からないけど。でもなんか違う気がするのだ。