遅かれ、早かれ、恋になりまして。
「だって、普通先輩のことは俺に任せとけばよくなかったですか?それなのに、自分が病院連れていきますって聞かないし」
八木くんが少し不満そうに続ける。
「…。」
「課長に説明したら、様子見てこいって言われて病院向かったら、まだ有馬さんいて」
「……。」
「打ち合わせのとき、いつも鋭い人だなーって思ってたんで、昨日の有馬さん見て意外だなと思って」
「………。」
「あの、先輩?聞いてます?なんか知り合いとかですか?」
「…………。」
――あー、もう。どうしよう。嬉しくて、嬉しくて、どうしていいか分からない。
「先輩?顔赤いですけど」
「へっ?」
「今日の打ち合わせ14時からなんで、今熱とかやめてくださいよ」
「だ、大丈夫!大丈夫!」
慌てて否定しながら、私は反射的に背を引いた。結局、「有馬さんと仲いいんすか?」なんて言葉も、八木くんの声も、ほとんど耳に入っていなかったまま、スーッと椅子を滑らせて自分のデスクへ戻る。
あぁ、もう……ほんとに。やめてほしい。優しくしないでほしい。仕事だけにしてほしい。私を見ないでほしいのに。
たった数回、会っただけだ。それも、毎朝の電車がたまたま同じだっただけで、一緒に仕事をするのだって今日でまだ3回目なだけなのに。
そんなはずなのに、どうしてこんなに落ち着かないのか分からない。
赤くなっている顔を両手で隠しながら、パソコンに向き合う。
メールを開いているはずなのに、文字は全然頭に入ってこなくて、気がつけばさっきから同じ画面を何度も見返しているだけで、頭の中には有馬さんの顔ばかりが、やけに鮮明に浮かんでいた。