遅かれ、早かれ、恋になりまして。

そこからの議論は驚くほどスムーズだった。大きな修正点はなく、細部の言い回しや導線の確認が中心になる。気づけば、会議はほとんど結論に向かって進んでいた。

田島さんが資料を一度閉じてから、「では本件はこの内容で進行とさせていただきます」と静かに告げた瞬間、会議室の空気がふっと緩む。

私はその言葉を聞きながら、ようやく肩の力を抜いた。

終わった、と思ったのに、その感覚はどこか実感が薄い。


「こちらこそありがとうございました。本件は正式に進行させていただきます」


高瀬課長が丁寧に挨拶をして締めると、NEXERA側のメンバーも立ち上がる。


立ち上がって片付けに入ろうとしたその瞬間、私は気づけば無意識に口を開いていた。


「あの…有馬さん」


彼が動きを止めて、こちらを見る。「はい」と短く返ってくるその声に、昨日からずっと胸の奥に引っかかっていたものが一気に表に出てきそうになる。


「昨日は、その…ありがとうございました」


言った瞬間、自分でも分かるくらい声が少しだけ小さくなる。助けてもらったこと、迷惑をかけたこと、その全部が一緒になって喉の奥に詰まっていて、ちゃんと形にして出そうとするほど、余計に言葉が引っかかっていく。


「それと、今日の打ち合わせも…ありがとうございました。うまくできてたと思っていいのか分からなくて」


そこまで言ったところで、自分でも何を言っているのか分からなくなる。

こんなこと、彼に話すべきじゃないのに。仕事の場で、しかも取引先に向かって言う内容じゃないって頭では分かっているのに、さっきまで張っていた緊張が抜けた反動みたいに、変に正直な言葉だけが先に出てしまった。
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