遅かれ、早かれ、恋になりまして。
うまく口が回らなくて焦って出てしまった自分の言葉に気づいた瞬間、カッと顔が熱くなっていくのが分かってしまう。
やばい、と心の中で思ったときにはもう遅くて、視線の置き場がなくなる。
すると彼はほんの一瞬だけ資料を見てから、静かにこちらへ視線を戻した。
「うまくできてましたよ。前回より整理されていて、かなり分かりやすかったです」
その言葉に、一瞬だけ呼吸が止まる。褒められているだけなのに、仕事としての評価なのに、どうしてこんなに落ち着かないのか分からない。
「それなら、よかったです…。いつも、資料まとめるのにも時間がかかってしまって。失敗するのが怖くて、いつもあーでもないこーでもないって、毎日残業しちゃって」
ははは、と自分で笑いながら言った瞬間に、頭の中で「あ、今の完全に余計なこと言った」と警報みたいなものが鳴る。
ほんと私、有馬さんに何の話してるんだろう。
仕事の打ち合わせ終わりの場で、わざわざ残業事情まで語る必要なんて一つもないのに、止められなかった自分が恥ずかしくて仕方がない。
「っ、すみません。こんな話!有馬さん、もう行かないといけないですよね」
いたたまれなくなって、有馬さんから視線を外す。うつむいたまま資料を整えるふりをして、手だけがやけに忙しく動いている気がする。
早くこの空気を終わらせたい、そう思った瞬間だった。
有馬さんが、ほんの少しだけ間を置いてから、ポツリと呟いた。
「明石さんって、結構慎重ですよね」