遅かれ、早かれ、恋になりまして。

「……そんなふうに見えるんですね」


小さく言うのが精一杯だった。


「明石さんは、もっと自信もっていいと思います」

「…っ、」


口角をあげながら、「では、また」と静かに告げて、有馬さんは軽く会釈をしてから背を向けた。
そのまま何事もなかったように会議室を出ていく後ろ姿を、私はただ目で追ってしまう。


扉が閉まる直前まで、その横顔から視線を外せなかった。

ドクドクと、痛いくらいに心臓がうるさい。
呼吸の仕方を思い出すみたいに一度大きく息を吸って、それでも落ち着かなくて、たまらず胸のあたりを押さえながら視線を落とした。


俯いた視界の中で、さっきの言葉だけが何度も反響していて、余計に熱が引かない。


「……しっかりして、弥生」


小さくそう呟いて、自分に言い聞かせる。

仕事だ、ただの打ち合わせだ、と何度も頭の中で繰り返すのに、さっきまで普通にできていたはずの呼吸がうまく戻ってこない。

胸の奥だけが、ひとりだけ別のリズムで動いているみたいで、余計に落ち着かない。

もう一度だけ息を整えようと、私はゆっくりと目を閉じた。
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