【忙しい人のための】シン・安倍晴明物語~天才陰陽師の恋~
第5話 泰山府君の忠告
朝、晴明が目覚めると隣の布団で玉屑が眠っていた。朝餉の時間になってもまだ起きないので、晴明は彼女に声をかけて起こした。玉屑は昨日に引き続き現世で起床したことを不思議に思っていた。
昨日と同様、玉屑は晴明と同じ朝餉を所望し、不味いのを我慢して食べている。賀茂忠行は神饌を準備させようとするが、彼女が「晴明と同じものがいい」と言って聞かないのである。
晴明と賀茂保憲が出勤するとき、玉屑も同行しようとしてきた。彼女が陰陽寮に来たら、昨日のような騒ぎは避けられない。授業の妨げになってしまう。晴明は何とか玉屑を説得し、彼女を屋敷に留まらせた。
陰陽寮で、保憲は陰陽頭の文武兼から怪異について相談を受ける。藤原師輔の九条殿で、風もないのに池の水が激しく揺れる怪異があったという。武兼は、式神の玉屑なら解決できるのではないかと期待していた。とはいえ、誰も玉屑の力を目にしたことがない。事件を解決できるかは未知数だが、晴明と保憲が話し合った結果、とりあえず玉屑を連れて九条殿を訪ねてみることにした。
一行が九条殿を訪ねると、師輔が出迎えた。邸内には、師輔の子息たちもいた。すでに玉屑と面識のある伊尹以外の誰もが、彼女を見て「式神は実在したんだ」と感嘆した。
怪異の発生した池は、普段と変わらない様子である。晴明には、玉屑がどうやって怪異を調べるのか皆目見当もつかない。師輔いわく、怪異が発生したのは夜らしい。玉屑は何かを思い出したらしく、一人で屋敷に残り夜を待つという。晴明も残ろうとするが、玉屑が一人で怪異と対峙する必要があるというので、仕方なく保憲と一緒に帰宅した。
九条殿に玉屑を一人置いてきた晴明は、彼女の目的について保憲と意見交換する。保憲は晴明の想念に導かれたのだと推し量るが、晴明は否定する。神仙はそんなに都合のいい存在でないと。まして、市井の一員にすぎない晴明に玉屑が引き寄せられたとも思えない。思えば、晴明は玉屑が神仙の力を使う場面をまだ見ていない。彼女が怪異に立ち向かえるのかどうか、心配になるばかりである。
夜になり、玉屑は邸内の池に向かった。空は雲一つなく、月明かりが池を照らしている。玉屑は池の中をのぞき込んだ。満月の翌日だけあって、水面にはほとんど丸い月が鏡のように映っている。だが、玉屑の姿を映し出してはいない。やがて何者かの人影がゆらゆらと浮かんだ。泰山府君である。彼は、水面から玉屑に直接話しかけてきた。
泰山府君にとって玉屑が現世に迷い込んだのは想定内だった。彼女は閉関をしたことで魂が解放され、妖神に引き寄せられた。泰山府君は玉屑を利用して、妖神の居場所を突き止めたのである。玉屑が妖神を発見したと報告すると、泰山府君は妖神を殺して魂を奪い取るように命じる。彼女は反対した。悪事をはたらいていない彼を、妖神の生まれ変わりというだけで始末することはできない。泰山府君は玉屑が妖神に恋心を抱いていると見抜き、妖神を倒す気がないならそれでも構わないと余裕を見せる。泰山府君は玉屑と妖神の関係に干渉するつもりはないらしい。最後に、玉屑は泰山府君から忠告を受けた。玉屑が炳霊帝君を蔑ろにして妖神と共生するのなら、悲惨な末路を辿ることになるだろうと。彼女が反論する前に、泰山府君は水面から姿を消した。
夜が明けて、玉屑は藤原師輔に怪異の解決を報告した。そして、怪異の正体についてありのままを話し、お騒がせしたと謝罪した。師輔は再び泰山府君が池に現れるのか心配したので、玉屑が事情を説明する。泰山府君が姿を現すのは今回が最初で最後だと。
師輔は玉屑に褒美を授けようとする。怪異は玉屑が原因だったので、彼女は遠慮する。しかし、神様へのお供え物だというので、彼女は女物の装束を希望する。上級貴族の姫君が着るものとはいえ、玉屑の装束に比べると見劣りする。とはいえ、この格好では周囲の目を引くので、市井に紛れたほうがいい。玉屑は褒美を受け取り、帰路に着いた。
帰宅した玉屑は、皆に怪異を退治したと知らせた。その正体が泰山府君であることは秘密にした。晴明は、玉屑が女物の装束を持っているのが不思議に感じられた。目立たないようにするためだと説明する玉屑。忠行と保憲は玉屑の気遣いに感謝する。しかし、晴明は別の理由があるような気がした。
玉屑は眠そうにしていた。昨晩ほとんど寝ていないのである。忠行は東の対の屋に布団を準備させようとする。ところが、彼女は以前と同様に晴明の隣がいいと言って聞かない。そこで、忠行は機転を利かせて、対の屋で晴明と一緒に寝たらどうだと勧める。晴明は反対するが、結局その場の雰囲気に押し流されてしまった。
夜、晴明は玉屑と布団を並べて床に就いた。晴明は思い切って玉屑に疑問をぶつけた。玉屑は賀茂家の守り神を自称しているのに、晴明にこだわるのはなぜなのか。返事はない。晴明が玉屑のほうを見ると、すでに熟睡しているようだった。晴明は呆れ返り、自分も寝ようとする。しかし、彼女が隣にいることで落ち着いて眠れなかった。
天慶五年(942)秋、紅葉の季節が訪れた。晴明は忠行から玉屑との関係は進展したかと聞かれる。この三か月間、晴明は玉屑に指一本触れていない。忠行はつまらなさそうにした。そこで、晴明に玉屑を赤山禅院へ案内するように勧めてきた。
昨日と同様、玉屑は晴明と同じ朝餉を所望し、不味いのを我慢して食べている。賀茂忠行は神饌を準備させようとするが、彼女が「晴明と同じものがいい」と言って聞かないのである。
晴明と賀茂保憲が出勤するとき、玉屑も同行しようとしてきた。彼女が陰陽寮に来たら、昨日のような騒ぎは避けられない。授業の妨げになってしまう。晴明は何とか玉屑を説得し、彼女を屋敷に留まらせた。
陰陽寮で、保憲は陰陽頭の文武兼から怪異について相談を受ける。藤原師輔の九条殿で、風もないのに池の水が激しく揺れる怪異があったという。武兼は、式神の玉屑なら解決できるのではないかと期待していた。とはいえ、誰も玉屑の力を目にしたことがない。事件を解決できるかは未知数だが、晴明と保憲が話し合った結果、とりあえず玉屑を連れて九条殿を訪ねてみることにした。
一行が九条殿を訪ねると、師輔が出迎えた。邸内には、師輔の子息たちもいた。すでに玉屑と面識のある伊尹以外の誰もが、彼女を見て「式神は実在したんだ」と感嘆した。
怪異の発生した池は、普段と変わらない様子である。晴明には、玉屑がどうやって怪異を調べるのか皆目見当もつかない。師輔いわく、怪異が発生したのは夜らしい。玉屑は何かを思い出したらしく、一人で屋敷に残り夜を待つという。晴明も残ろうとするが、玉屑が一人で怪異と対峙する必要があるというので、仕方なく保憲と一緒に帰宅した。
九条殿に玉屑を一人置いてきた晴明は、彼女の目的について保憲と意見交換する。保憲は晴明の想念に導かれたのだと推し量るが、晴明は否定する。神仙はそんなに都合のいい存在でないと。まして、市井の一員にすぎない晴明に玉屑が引き寄せられたとも思えない。思えば、晴明は玉屑が神仙の力を使う場面をまだ見ていない。彼女が怪異に立ち向かえるのかどうか、心配になるばかりである。
夜になり、玉屑は邸内の池に向かった。空は雲一つなく、月明かりが池を照らしている。玉屑は池の中をのぞき込んだ。満月の翌日だけあって、水面にはほとんど丸い月が鏡のように映っている。だが、玉屑の姿を映し出してはいない。やがて何者かの人影がゆらゆらと浮かんだ。泰山府君である。彼は、水面から玉屑に直接話しかけてきた。
泰山府君にとって玉屑が現世に迷い込んだのは想定内だった。彼女は閉関をしたことで魂が解放され、妖神に引き寄せられた。泰山府君は玉屑を利用して、妖神の居場所を突き止めたのである。玉屑が妖神を発見したと報告すると、泰山府君は妖神を殺して魂を奪い取るように命じる。彼女は反対した。悪事をはたらいていない彼を、妖神の生まれ変わりというだけで始末することはできない。泰山府君は玉屑が妖神に恋心を抱いていると見抜き、妖神を倒す気がないならそれでも構わないと余裕を見せる。泰山府君は玉屑と妖神の関係に干渉するつもりはないらしい。最後に、玉屑は泰山府君から忠告を受けた。玉屑が炳霊帝君を蔑ろにして妖神と共生するのなら、悲惨な末路を辿ることになるだろうと。彼女が反論する前に、泰山府君は水面から姿を消した。
夜が明けて、玉屑は藤原師輔に怪異の解決を報告した。そして、怪異の正体についてありのままを話し、お騒がせしたと謝罪した。師輔は再び泰山府君が池に現れるのか心配したので、玉屑が事情を説明する。泰山府君が姿を現すのは今回が最初で最後だと。
師輔は玉屑に褒美を授けようとする。怪異は玉屑が原因だったので、彼女は遠慮する。しかし、神様へのお供え物だというので、彼女は女物の装束を希望する。上級貴族の姫君が着るものとはいえ、玉屑の装束に比べると見劣りする。とはいえ、この格好では周囲の目を引くので、市井に紛れたほうがいい。玉屑は褒美を受け取り、帰路に着いた。
帰宅した玉屑は、皆に怪異を退治したと知らせた。その正体が泰山府君であることは秘密にした。晴明は、玉屑が女物の装束を持っているのが不思議に感じられた。目立たないようにするためだと説明する玉屑。忠行と保憲は玉屑の気遣いに感謝する。しかし、晴明は別の理由があるような気がした。
玉屑は眠そうにしていた。昨晩ほとんど寝ていないのである。忠行は東の対の屋に布団を準備させようとする。ところが、彼女は以前と同様に晴明の隣がいいと言って聞かない。そこで、忠行は機転を利かせて、対の屋で晴明と一緒に寝たらどうだと勧める。晴明は反対するが、結局その場の雰囲気に押し流されてしまった。
夜、晴明は玉屑と布団を並べて床に就いた。晴明は思い切って玉屑に疑問をぶつけた。玉屑は賀茂家の守り神を自称しているのに、晴明にこだわるのはなぜなのか。返事はない。晴明が玉屑のほうを見ると、すでに熟睡しているようだった。晴明は呆れ返り、自分も寝ようとする。しかし、彼女が隣にいることで落ち着いて眠れなかった。
天慶五年(942)秋、紅葉の季節が訪れた。晴明は忠行から玉屑との関係は進展したかと聞かれる。この三か月間、晴明は玉屑に指一本触れていない。忠行はつまらなさそうにした。そこで、晴明に玉屑を赤山禅院へ案内するように勧めてきた。