【大河ドラマ】忙しい人のための新・安倍晴明物語

第5話 護法陣

 天慶五年(942)夏、玉屑は晴明に来てほしい場所があるようだ。彼女はさっそく晴明から渡された市女笠を被り、二人は密かに屋敷を抜け出した。

 満月の月明かりに照らされながら、晴明は満月の夜だけ玉屑の夢を見ると打ち明けた。言葉にした後で、彼は後悔した。こんな話をしても玉屑に気持ち悪がられるだけだと。ところが、意外な反応が返ってきた。なんと、玉屑も満月になると晴明の夢を見るというのだ。しかし、晴明は冗談にしか聞こえなかったので、深く追及しなかった。

 玉屑は五条大路と朱雀大路が交差するところで立ち止まった。ちょうど平安京の中心部である。この地点を陣眼とし、妖魔の侵入を防ぐ結界を張るという。晴明は、玉屑が一人で結界を張るとばかり思っていた。ところが、玉屑は晴明の力が必要だという。晴明は、ただの人間に過ぎない自分の力が必要な理由が分からない。

 玉屑は晴明に向かって両手を差し出すよう要求してきた。晴明は訳が分からぬまま、言われたとおりにした。二人は両手を合わせ、目を閉じて全神経を集中させた。すると、巨大な円形の結界が都全体を包みこんだ。この結界は、真神でもないかぎり破ることはできないという。

 翌朝、晴明は玉屑の夢を見ることなく起床した。原因は分からない。玉屑は、二人の物理的な距離が近いから、互いに夢を見なかったのだと推し量る。晴明は、玉屑の言葉が冗談ではない気がしてきて、どのような夢を見ていたのか尋ねる。なんと、彼女もまた、夢の中で晴明の日常をのぞいていたというのだ。晴明は、急に恥ずかしい気持ちになった。

 晴明が出勤しようとすると、玉屑が同行しようとしてきた。授業参観をしたいという。玉屑が陰陽寮にいれば、騒ぎになることは間違いない。晴明は断ろうとするが、玉屑は笠を被っているからいいだろうと強引に押し切った。

 陰陽寮で晴明が授業を受けている間、玉屑は前庭の木から枇杷の実を採っていた。それからしばらくの間は授業を聞いていたが、やがて眠ってしまった。退勤時刻になり、一足先に外へ出た陰陽師の秦連茂が眠っている玉屑を発見した。女子が陰陽寮にいると大騒ぎになり、皆は雪崩のように玉屑のもとへ押し寄せた。晴明は何とか人混みをかき分け、玉屑を揺り起こした。周囲に奇異の目で見られながら、晴明は玉屑の手を引いてその場を後にした。

 晴明と玉屑は文武兼に呼び出され、説明を求められる。玉屑は賀茂家の式神だと名乗り、六道珍皇寺における異音騒ぎの犯人は自分だと明かした。仙界から地下通路を辿り六道珍皇寺の井戸を上がろうとしたが、壁が塞がっていて通れなかったのだと。玉屑の素性を疑う武兼に対し、晴明は「玉屑は衆生を害するような存在ではない」と約束した。

 帰宅前、晴明は典薬寮に用があると言い、玉屑を連れていく。彼は丹波康頼に、虫刺されに効く薬を要求した。皆の前で彼女を揺り起こしたとき、首筋に小さな湿疹があった。その湿疹を、虫刺されだと思ったのである。

 晴明は玉屑に疑問を呈した。なぜ治癒の法術が使えるのに、傷を治さないのかと。玉屑は「この傷は虫刺されなどではなく、現世に来る前に付けられた傷で、治す必要などないからだ」と答える。晴明は血相を変え、一体誰に傷つけられたのかと問いただした。彼女との別れを惜しんだ家族に付けられたという。晴明は「この世に直す必要のない傷など存在しないし、いくら家族でも、本当に相手が大切なら傷つけるべきではない」と玉屑の考えを真っ向から否定する。玉屑の傷を見に来た康頼は、それが男女の交わりの際にできるものだと察した。しかし、これ以上事を荒立てたくない玉屑は、自らの法術で傷を治した。

 その日の夜、晴明は玉屑から香り袋を渡された。誕辰の贈り物だという。昼間に採った枇杷の皮と葉を用いて調合したのだ。晴明は、今日が自分の誕辰だということをすっかり忘れていた。平安京には誕辰に贈り物をする風習がないから、晴明は驚き喜んだ。

 この日は七夕でもあった。夜空は晴れていて、天の川がよく見えた。晴明は幼少期に玉屑と出会った頃を回顧し、胸元から腕輪を取り出した。そして、この腕輪にはどのような力があるのか尋ねた。玉屑いわく、腕輪には膨大な霊力が込められており、いざというときに力を発揮するという。晴明は、平将門の祟りを鎮める際、謎の力によって暴風雨が退けられたことを思い出した。同時に、最初の出会いから今までに見た夢は幻などではなく、現実の出来事だったのだと知った。

 天慶五年(942)秋、紅葉が色づく季節になった。特に、赤山禅院の紅葉は絶景との評判である。そこで、賀茂忠行は晴明に玉屑を赤山禅院へ案内するよう勧める。玉屑に父神が祀られているさまを見せ、我が朝に愛着を持ってもらいたいという。
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