【大河ドラマ】忙しい人のための新・安倍晴明物語
第6話 追儺
天慶五年(942)秋、陰陽寮から帰宅した晴明は玉屑と共に赤山禅院へ向けて出発した。晴明は川沿いに進んで目的地を目指すと提案する。市中には穢れが蔓延しているからだ。
晴明は、玉屑が現世に光臨した真の目的を確かめようとした。彼女はあっさりと「賀茂家を守るため」というのは方便だと認める。玉屑が現世に来てからはや三か月が過ぎたが、目的達成のために行動している素振りは見せない。しかし、玉屑はすでに妖神と接触済みであり、彼を育成している段階だった。晴明は驚いた。これまで玉屑が出会った人間の中に、妖神と思しき人物はいなかったからだ。妖神が善性を獲得し一人前に育たなければ、泰山府君に合わせる顔がないという。
道中、晴明は玉屑から恋人の有無を聞かれる。彼には、生まれてこの方恋人がいたことがない。女子に興味がないわけではなく、縁に恵まれなかったのだ。玉屑は、女子と交わる悦びを知らずに二十数年も生きてきた晴明を褒め称えた。彼女は、ほんの三か月陰陽を交えないだけでも鬱屈とした気持ちになるという。もっとも、晴明にとって彼女の賞賛は皮肉のようにしか聞こえなかった。玉屑が長々と身の上話をしている間に、現地に到着した。
赤山禅院は、忠行が言っていたとおり色鮮やかな紅葉に囲まれていた。晴明は絶景だと感動したが、玉屑は紅葉から地獄の火炎を連想し、その場を白けさせた。晴明は本堂で赤山明神に願掛けをしようとして、玉屑に制止される。泰山府君は衆生に興味などないから、願っても無駄だという。興を削がれた晴明は、願うのをやめた。
境内では、地獄の火炎のような紅葉のなかを、たくさんのカラスが飛び交っている。玉屑いわく、地獄では鉄でできたカラスが罪人を攻撃する刑罰が存在する。地獄の刑罰にはさまざまな種類があり、彼女は境内を散策しながら一つずつ解説しようとした。晴明は絶景を台無しにしないために、彼女を制止した。
帰り際、玉屑は紅葉を集めて懐にしまった。晴明への香料の材料にするという。香料は、四季によって使い分けるのが貴族の嗜みである。素敵な女子と出会いたいなら、身だしなみはきちんとすべきだと。晴明は、玉屑が自分にだけ尽くしてくれる理由が分からなかった。
天慶五年(942)冬、保憲は暦得業生と陰陽師を兼ねることになった。得業生は陰陽師として修行を経て、博士になる決まりなのだ。修行の一環として、保憲は大晦日の追儺に参加を命じられた。晴明も弟子として同行が決まった。
追儺の当日、陰陽寮は殿上人が使用する桃の弓と葦の矢を用意した。ところが、晴明が桃の弓を持った瞬間、手を火傷してしまう。あまりの熱さに晴明は思わず手を離し、弓は床に転がった。晴明はなぜ木に触れただけで火傷したのか分からなかった。現場を目撃していなかった保憲は、晴明は弓で手を切ったのを火傷と勘違いしているのだと思った。
晴明の傷口からは血が出ていた。桃の弓にも血が付いており、穢れに触れる形となった。保憲は治療のために晴明を典薬寮に連れていこうとする。その時、枇杷の木陰から玉屑が姿を現した。あまりに突然だったので、保憲は驚きのあまり魂が消え入りそうになった。
玉屑は法術を用いて晴明の傷を癒した。その光景を見ていた誰もが、彼女に畏敬の念を抱いた。穢れに触れてしまった弓は使い物にならない。皆がどうしようと慌てていると、殿上人を代表して藤原師尹が催促に来た。この時、玉屑は治療のために市女笠を脱いでいたので、師尹に女子がみだりに顔を見せるなと叱責された。彼女は怯むことなく、状況を説明する。二人が揉めている間に、晴明が予備の弓を見つけた。こうして、追儺は事なきを得た。晴明と保憲は方相氏として儀式に参加し、玉屑も外からその様子を楽しんだ。
帰宅した晴明は、玉屑に火傷の原因について心当たりはあるか尋ねる。桃の木には魔除けの効果がある。とはいえ、晴明はまさか自分が妖魔だとは夢にも思わなかった。玉屑は「生きていればいつか分かる」という。彼女の意味深な態度に、晴明は困惑するばかりだった。
天慶六年(943)春、三月最初の巳の日には上巳の祓が行われる。陰陽師が河原で貴族の穢れを祓うのだ。まだ陰陽師として駆け出しの保憲に得意先と呼べる相手はいない。玉屑は丹波康頼には恩があると言うので、何とか康頼との約束を取り付けた。
玉屑いわく、穢れは紙切れで洗い流せるものではない。晴明は彼女にこう説明した。「本当に穢れが除かれるかはどうでもよくて、陰陽師は祓えで褒美をもらって生活しています。陰陽師にとって生命線のようなものなのです」。
穢れを祓う際には、人の形をした形代を用いる。形代を折っている晴明を見た玉屑は、剪紙成兵術を想起する。形代を傀儡として使役する術だ。玉屑は、晴明に剪紙成兵術を教えてやるという。
晴明は、玉屑が現世に光臨した真の目的を確かめようとした。彼女はあっさりと「賀茂家を守るため」というのは方便だと認める。玉屑が現世に来てからはや三か月が過ぎたが、目的達成のために行動している素振りは見せない。しかし、玉屑はすでに妖神と接触済みであり、彼を育成している段階だった。晴明は驚いた。これまで玉屑が出会った人間の中に、妖神と思しき人物はいなかったからだ。妖神が善性を獲得し一人前に育たなければ、泰山府君に合わせる顔がないという。
道中、晴明は玉屑から恋人の有無を聞かれる。彼には、生まれてこの方恋人がいたことがない。女子に興味がないわけではなく、縁に恵まれなかったのだ。玉屑は、女子と交わる悦びを知らずに二十数年も生きてきた晴明を褒め称えた。彼女は、ほんの三か月陰陽を交えないだけでも鬱屈とした気持ちになるという。もっとも、晴明にとって彼女の賞賛は皮肉のようにしか聞こえなかった。玉屑が長々と身の上話をしている間に、現地に到着した。
赤山禅院は、忠行が言っていたとおり色鮮やかな紅葉に囲まれていた。晴明は絶景だと感動したが、玉屑は紅葉から地獄の火炎を連想し、その場を白けさせた。晴明は本堂で赤山明神に願掛けをしようとして、玉屑に制止される。泰山府君は衆生に興味などないから、願っても無駄だという。興を削がれた晴明は、願うのをやめた。
境内では、地獄の火炎のような紅葉のなかを、たくさんのカラスが飛び交っている。玉屑いわく、地獄では鉄でできたカラスが罪人を攻撃する刑罰が存在する。地獄の刑罰にはさまざまな種類があり、彼女は境内を散策しながら一つずつ解説しようとした。晴明は絶景を台無しにしないために、彼女を制止した。
帰り際、玉屑は紅葉を集めて懐にしまった。晴明への香料の材料にするという。香料は、四季によって使い分けるのが貴族の嗜みである。素敵な女子と出会いたいなら、身だしなみはきちんとすべきだと。晴明は、玉屑が自分にだけ尽くしてくれる理由が分からなかった。
天慶五年(942)冬、保憲は暦得業生と陰陽師を兼ねることになった。得業生は陰陽師として修行を経て、博士になる決まりなのだ。修行の一環として、保憲は大晦日の追儺に参加を命じられた。晴明も弟子として同行が決まった。
追儺の当日、陰陽寮は殿上人が使用する桃の弓と葦の矢を用意した。ところが、晴明が桃の弓を持った瞬間、手を火傷してしまう。あまりの熱さに晴明は思わず手を離し、弓は床に転がった。晴明はなぜ木に触れただけで火傷したのか分からなかった。現場を目撃していなかった保憲は、晴明は弓で手を切ったのを火傷と勘違いしているのだと思った。
晴明の傷口からは血が出ていた。桃の弓にも血が付いており、穢れに触れる形となった。保憲は治療のために晴明を典薬寮に連れていこうとする。その時、枇杷の木陰から玉屑が姿を現した。あまりに突然だったので、保憲は驚きのあまり魂が消え入りそうになった。
玉屑は法術を用いて晴明の傷を癒した。その光景を見ていた誰もが、彼女に畏敬の念を抱いた。穢れに触れてしまった弓は使い物にならない。皆がどうしようと慌てていると、殿上人を代表して藤原師尹が催促に来た。この時、玉屑は治療のために市女笠を脱いでいたので、師尹に女子がみだりに顔を見せるなと叱責された。彼女は怯むことなく、状況を説明する。二人が揉めている間に、晴明が予備の弓を見つけた。こうして、追儺は事なきを得た。晴明と保憲は方相氏として儀式に参加し、玉屑も外からその様子を楽しんだ。
帰宅した晴明は、玉屑に火傷の原因について心当たりはあるか尋ねる。桃の木には魔除けの効果がある。とはいえ、晴明はまさか自分が妖魔だとは夢にも思わなかった。玉屑は「生きていればいつか分かる」という。彼女の意味深な態度に、晴明は困惑するばかりだった。
天慶六年(943)春、三月最初の巳の日には上巳の祓が行われる。陰陽師が河原で貴族の穢れを祓うのだ。まだ陰陽師として駆け出しの保憲に得意先と呼べる相手はいない。玉屑は丹波康頼には恩があると言うので、何とか康頼との約束を取り付けた。
玉屑いわく、穢れは紙切れで洗い流せるものではない。晴明は彼女にこう説明した。「本当に穢れが除かれるかはどうでもよくて、陰陽師は祓えで褒美をもらって生活しています。陰陽師にとって生命線のようなものなのです」。
穢れを祓う際には、人の形をした形代を用いる。形代を折っている晴明を見た玉屑は、剪紙成兵術を想起する。形代を傀儡として使役する術だ。玉屑は、晴明に剪紙成兵術を教えてやるという。