本好きで恋愛苦手な私が推し小説家に溺愛されるまで
 1時間半後。

 キッチンで夕飯を作っている私の元に、髭のないいつもの藍堂先生がふらりと現れた。
 シャワーを浴びたんだろう、ほんのりと石鹸の香りが漂っている。

「先生、お待たせしてすみません。今、書斎に持って行きますのでーー」
「いや、仕事が忙しい時以外は、こっちでご飯を食べていいか?」
「ええ、もちろんですとも」

 私は出来上がった料理を、ダイニングテーブルに運ぶことにした。
 夕食をすべて藍堂先生の前に並べ終えたところで、先生が私の方を向く。

「君も一緒に」
「えっ」
「もう食べ終わった?」
「いえ、まだです」
「じゃあ一緒に食べよう」
「は、はい」

 私の返事を聞いた藍堂先生が、ふわりと花が咲くような微笑を浮かべたので、見とれてしまった。
 前任のハウスキーパーの方とも一緒に食事していたんですか? と喉まで出かかっていたけれど、何故か飲み込む。

 自分の分の配膳も終わったので、藍堂先生の向かい側の席に腰を下ろした。

「いただきます」
< 24 / 86 >

この作品をシェア

pagetop