本好きで恋愛苦手な私が推し小説家に溺愛されるまで

「苅安出版? ああ、美咲さんが来たのか。苅安出版の〆切はまだまだ先なのに。本当にあの人はせっかちなんだよな」

 藍堂先生は柔らかな笑顔を浮かべて、うれしそうに呟く。

「……あの方、ミサキさんとおっしゃるんですね」
「ああ。漢字は『美しい』の美に『花が咲く』の咲で、美咲(みさき)さんだ。俺が一番親しくしている編集部員で、また家に来ることもあるだろうから覚えておいてくれ」
「かしこまりました」

 美しく咲くと書いて、『美咲』さん。美女って名前まで綺麗なんだ。
 ......。
 藍堂先生が一番親しくしている編集部員で、名字じゃなくて名前で呼んでるってことは……もうすぐ彼女になるかもしれない女性なのかも。だとしたら、私に敵意剥き出しだったことも理解できる。
 苅安出版は藍堂先生のデビュー作を出版し、今も藍堂先生と関わりの深い大手出版社だ。
 バリキャリの華やかな美女編集部員と美男子作家の組み合わせって、なんだかドラマみたいだな。

 ――地味な私には関係ない世界の話。
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