本好きで恋愛苦手な私が推し小説家に溺愛されるまで

第六話 ただのアクシデントなのに

◇◇◇

 キッチンの掃除をしていると、書斎のドアが開く音が聞こえて私は顔を上げる。

(藍堂先生が仕事中に書斎から出てくるの、珍しいな)

 書斎から出てきた藍堂先生はリビングの背の高い本棚の前で佇んでいた。

「藍堂先生、どうかしましたか」

 振り返った藍堂先生は少し困った顔をしている。

「女性の登場人物が手がかりを探して、高い棚の上に手を伸ばすシーンを書いているところなんだが……」

 藍堂先生はそう言いながら、軽々と棚の上を触った。
 藍堂先生は背が高いので、動きがイメージしづらいんだろう。

「私が実演してみましょうか」
「業務外のことを頼んですまない。特別手当てを……」
「ふふっいいですよ、これくらい」

 たまに出る、藍堂先生の天然な発言がほほえましい。私は先生と入れ替わって棚の前に立った。
 思いきり腕を伸ばしてみたものの、棚の上部分には全然届かない。

(これじゃ何の参考にもならないよね……)

 何か踏み台になるようなものはないか、辺りを見回す。
 棚の隣に置いてある、縛った新聞の束が目に写った。
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