本好きで恋愛苦手な私が推し小説家に溺愛されるまで
店員さんにお礼を言った後、鏡を見る。鏡越しに、微笑を浮かべた藍堂先生と目が合った。
藍堂先生も、いつの間にかーー私がドレスアップしている間だろうーー綺麗めのスーツに着替えている。
濃いネイビーの三つ揃いスーツはほどよく体にフィットしていて、体格の良さが伝わってくる。
ワイシャツはライトグレーでシックに。
ネクタイは光沢のあるブルーグレーに白の細いストライプ柄。オシャレでシャープな印象を与える。
色もシルエットも藍堂先生にぴったりで、魅力をさらに引き出している。
あまりにもかっこよくて目が離せない。
「よく似合ってるよ」
「あ、ありがとうございます……」
鏡越しでは穴が開くんじゃないかってくらい見つめていたのに、面と向かうと恥ずかしくて目を逸らしてしまう。
「じゃあ行こうか」
「え!」
「ありがとうございました」
店員さんの雰囲気からも、支払いはすでに済んでいる様子……。
(メイクアップにドレスみたいなワンピースにパンプス。トータルするとすごい値段になってるはず! 支払いは……)
店員さんの前で、支払いについて尋ねることは藍堂先生に恥をかかせることになるかもしれない。
(二人きりになったら聞こう……)
店の外に出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。
足元が暗いのと、慣れないハイヒールを履いているので、少し足がふらついてしまう。
「わ」
とっさに藍堂先生が私の手を取り、支えてくれた。
「す、すみません……」