本好きで恋愛苦手な私が推し小説家に溺愛されるまで

 体勢が整ったので、藍堂先生の手を離そうとしたのだけれど……、藍堂先生はぎゅっと繋いだままで。

「危ないからこのままで」
「は、はい……」

 またふらついて、もしコケたら取材中止になりかねないからかな。
 藍堂先生に手間をかけさせてしまって申し訳ない。
 ……大きい手。私の手をすっぽりと包んでる。

 駐車場につくと、藍堂先生は助手席のドアを開けてくれた。

「ありがとうございました」

 藍堂先生の手が離れて、私は車に乗り込む。
 ……ほんの少しの時間だったのに、手が淋しい。

(何考えてるの!)

 私が雑念を追い払うために頭を振っている間に藍堂先生は車に乗り込み、運転を始める。
 すぐにレストランの駐車場に着いた。
 ちらりと見える店の外観から、シックなフレンチレストランであることがわかる。
 藍堂先生はドアを開き、私の前に手を差し出した。

「す、すみません」

 私は恐縮しながら、また藍堂先生の手を取る。
 店内に入り、私がシャンデリアの美しさに圧倒されていると、藍堂先生は店員さんと話をし、私達は個室に通された。

 カップルのために作られた空間に、藍堂先生と二人きりで向かい合って座っていることが不思議でたまらない。
 ほどなくして、食前酒とアミューズが運ばれて来た。
 宝石のように美しいテリーヌ。

「個室で誰もいないから、あまり細かいマナーは気にせず味わおう」

 藍堂先生が悪戯っ子のような笑みを浮かべていて。

「そうですね」

 食前酒のシャンパンを飲み、星形のオクラが煌めく小さなテリーヌを一口でいただく。

「美味しすぎます……!」

 その様子を見た藍堂先生が「栞さんは顔に出やすいな」と笑った。
 カッと顔が熱くなる。

(暑いのは、久しぶりに飲んだお酒のせい……!)

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