本好きで恋愛苦手な私が推し小説家に溺愛されるまで
「俺です。……他の出版社からの連絡なので、席を外します」
鷹司さんはそう言い残して、個室から出ていった。
初対面の美咲さんと二人きりになる。
(……何か話さないと!)
私は微笑を浮かべながら、頭をフル回転させた。
(あ、そうだ)
「あの……鷹司さんがデビューした時、年齢を非公開にした経緯をお聞きしてもよろしいでしょうか」
私が尋ねると、美咲さんはにこやかに「ああ、」と話し出した。
「当時の編集長は、13歳で大賞はセンセーショナルで話題になると言って、鷹司の年齢を公開したがっててな。
でも、鷹司自身が騒がれたくないと言っていたし、中学生が書いた小説の舞台が中学校で、殺人事件が起きるサスペンスミステリなんて、絶対変に深読みするヤツが出てくるだろって。年齢がノイズになって純粋に作品を見てもらえなくなる。話題になって本が売れれば利益が得られるが、作家本人にとってはマイナスの方が大きい。折角の若い芽が潰されるって、当時の編集長を説得したんだ。俺は当時34歳でヒラの編集部員だったがな、編集長に食ってかかったよ」
「そうだったんですね……」
ガハハと笑い飛ばす美咲さんは豪快そうに見えて、細やかな心遣いができる人だ。
孤独な子供だった鷹司さんの傍に、ちゃんと鷹司さんを守る大人がいて良かったと私は心から思った。