本好きで恋愛苦手な私が推し小説家に溺愛されるまで
「なんであんたが一緒にいるのよ!」
エントランス前の樹の影から、薄汚れた若い女性が飛び出した。
まったく見覚えがないーーけれど、この声に聞き覚えがある。
「まさかあなたは……」
(宮本優衣華……!?)
初めて会った時と比べて、印象がまったく違うので気付かなかった。
あの時はサラサラとした綺麗な髪だったのに、今はベタッとしていて。
隙のないメイクをしていたのに、眉はまばらで唇はガサガサ、目の下にはくっきりとしたクマが刻まれている。
それになんだか……鼻につく異臭がする。
(まさか、クビになってからお風呂に入らずにずっとこの辺りに潜伏していたの!?)
横にいた鷹司さんが私を隠すように前に出ると、宮本優衣華は急に笑顔になった。
「先生! 私、先生の大ファンでぇ~~」
上目遣いでかわいこぶる姿に、鷹司さんは眉間にシワを寄せながらも冷静に、けれども大きな声で「警察から接近禁止と警告されてますよね」と言った。
すると宮本優衣華は、
「何かの間違いです! だって、美人な私の方がイケメンにふさわしいでしょ!?」
と目を輝かせた。
怖すぎる。全然話が通じない……。
宮本優衣華がエントランスのオートロック操作盤に立ちはだかっているため、私たちはマンションに入ることができないのだ。
車に戻ったら、警察に通報できるかも……?
でも、宮本優衣華に背後を見せるのは怖い。
(どうしよう……)
「俺は全く思わない。帰って下さい。このままだと、ストーカーだと警察に逮捕されますよ!」