いじわる主治医は、私にだけ甘い
帰り道。
夕陽が伸びていき、眩しいくらいだ。
私たちは自然と手を繋いだ。

「お疲れ様、冴」

「ねぇ、彩人。彩人の家族ってどんな人達」

「もう引退してるけど、父さんも産婦人科の医者だった。母さんは少し体が弱くて専業主婦だったけど、俺たちは三人兄妹でさ。いつも家にいて優しく迎えてくれた。母さんはうちの太陽みたいな人だよ。冴は? 5人兄弟なんだろ」

「うちはね、長女の私以外みんな男の子で。母親は仕事はしてたけど、それを言い訳にしていつも下の子たちの世話を押し付けられてた。お父さんも普通のサラリーマンだったけど仕事人間でほとんど家に居なくて。なんだか寂しいっていつも思ってた」

「そうか、そりゃあ苦労したな」

「うんうん、18で家を出た時、ざまぁみろって思ったの。私、そんなに性格よくないよ。弟たちが思春期で大切な時期に自分から逃げたから。案の定グレたみたいで、今家大変らしいのに帰らないし」

「帰りたくなったら帰ればいいよ。もう、縛られなくていい。
家族っていうのは鎖で縛られるものじゃないんだよ。絆なんだと俺は思う」

まるで、蛇口を捻ったみたいに、涙が出た。
全部を受け止めてくれるから。

彩人だって簡単に言うけど、親が医者だから自分もなることが決まってる人生につらいことだってあったはずなのに。

「ずっとずっと……忘れられないの。親たちの道具として育てられた気がして」

「だから、冴は忘れちゃったんだな。自分を大切にすること。辛い時に我慢しないこと。人と人のつながりや、温もりの大切さをさ」

「そうかもしれない」

彩人はハンカチを手渡してくれる。
少しタバコの匂いがした。

「でもさ、これから変わっていけばいいんだよ」

「全部変えてみせてくれるの?」

「それは分からない。けれど、俺は冴にとって新しい世界になれたらいいなって本気で思ってる」

「嬉しい……ありがとう」

ほっぺたをつままれる。

「ほら、泣かせてるみたいだろ。すぐ泣き止め」

「ムリ! ズビッ」

彩人はため息ついて、頭を撫でながら頭ごと抱きしめてくれた。
私は彩人と来週ハワイに行ったら、世界観が変わるのかな?
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