いじわる主治医は、私にだけ甘い
夕日が少し強く差し込んできた頃、私が目を覚ますと、隣で慶人さんが本を読んでいた。

「慶人さん……」

「間違えなかったのか、すごいな」

「何となく2人って佇まいが違うんですよ。慶人さんはサラッとしてて、彩人はどっしりって感じがする」

「分かりやすいようで、全くわかんないな」

「何読んでるんですか?」

「『アルジャーノンに花束を』だよ」

「有名ですね。チャーリーの変遷がとても面白い」

「あぁ、知能とはなにか考えさせられるよな」

慶人さんとこういう話をできるとは思わなかったから、嬉しかった。彩人はいつも図書館に来る時も医学書しか読んでないから。

「慶人さんと小説の話ができて楽しかったです」

と話すと微笑しながら、また髪を撫でてきた。

「もう調子はいいのか?」

「はいっ」

「彩人は病院の方に戻ってる。夕飯までには帰ると言っていた」

「そうですか」

彩人も忙しい間を縫って、来てくれてたんだな。

「こうして二人いると順番に様子をうかがえるな」

「そんな……大したことないから大丈夫です」

「大丈夫も、1人でいいも禁句」

「……はい。あの、ありがとうございます」

二人がいてくれて心強かったから。
甘えていいんだって思えたから、素直にここに来たんだ。

「元気になったら私にもできること、返していけたらいいです」

「あぁ、楽しみにしてるよ」

すると、また眠気が来て自然と身を委ねていた。
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