いじわる主治医は、私にだけ甘い
桐ケ谷家に住むようになって、一カ月が過ぎた。
栄養のある食事に、二人の主治医に見守られて、図書館員の仕事も無事に復帰し、私の体調はかなり安定していった。

「冴、最近体調もいいし一緒にどっかに行かないか?」

「彩人は忙しくないの?」

「夏休みに入って大学の講義は一区切りついたし、病院もお盆で少しは時間作れる」

「ということは慶人さんも一緒? この間おすすめの場所があるって言ってたけど」

「いや俺は、冴と二人の時間を作りたい」

慶人さんへの気持ちをずっと考えていた。
優しくて、穏やかで、守ってくれる。
けれど、私が恋をしているのはいつだって、彩人だった。

「私もだよ、彩人との時間をもっと作りたい」

「じゃあ二人で行こう。普通にショッピングモールでデートして、カラオケ行ったり、映画見たり、そういうの二人でしたいんだ」

「公園でピクニックしたり、景色がいいところをドライブしたり、温泉入ったり」

「いいな。そういうのを”二人きり”でしたい」

「ごめんね。私が迷ってるように見えるから、彩人を傷つけてる」

彩人は首を横に振った。

「もう十分だよ。冴がこうして少しずつ元気になってきて、優しさをくれる」

「でも私はちゃんとしたいから。彩人とデートする前に慶人さんと二人で話す時間をくれないかな?」

「勿論、冴がそう決めたなら、俺が断る理由はない。でももうこれからは絶対俺だけ見つめてくれるって期待していいんだよな」

私は返事の代わりに彩人の首に腕を回して、目を閉じた。

「私の王子様はずっと一人だけだよ」

「お姫様、ありがたき幸せ」

そうして二人で口づけをした。
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