いじわる主治医は、私にだけ甘い
慶人さんと約束して、車で前にお勧めしてくれたラウンジに向かった。
凄く景色がきれいで、本の選書も素晴らしくて、私は思わずテンションが上がったけれど、同時に胸がちくりとした。
私、今からこの人を振るんだ。
でも、それは彩人を選ぶことでもある。
私の身も心も彩人だけに預けたいから。
「冴ちゃんが家に来て、毎日が楽しくなった。箱根に行ったときは楽しかったね。一緒に食べたお饅頭、すごくおいしかったよね」
「慶人さん……」
「僕はこれから振られるんだよね。言わなくてもわかるよ。冴ちゃんの顔を見てれば」
「慶人さんが教えてくれたんです。あの時『僕は君が君の思っているよりずっと強くて、迷ったり悩んだりしても、最後には君は答えを出せる人だと思うよ』って」
「うん、僕が言ったね。それでも答えを聞きたくないと言ったら?」
「だとしても、私は慶人さんに伝えなければなりません。慶人さんの人生をこれ以上縛りたくないから」
「……分かった、ちゃんと聞くよ」
慶人さんはカウンター席に座り、私はその横に静かに座った。
「私の手術の時。慶人さんが『俺たちの未来だ』と言って、潰れかけていた彩人の心を取り戻してくれたのを知っています。慶人さんははじめからそういう人でした。優しくて、でもただ優しいだけじゃなくて厳しさも持っていて。こんな人に守られたら素敵だろうって思ったことも正直言うとありました」
「うん……」
「でも私、完璧じゃないからこそ彩人を愛しく思うんです。もう完成している何かじゃなくて、ふたりで一緒に信頼関係を築いていこうと言ってくれた彩人がいいんです。だからごめんなさい。慶人さんとは付き合うことはできません」
「ちゃんと話してくれてありがとう。でも正直に言うと、これで完全に吹っ切れたなんてかっこいいことは言えない」
「分かってます。こんなにも私のことを考えてくれてありがとうございました。慶人さんとの時間は私にとっても、あたたかな思い出としてしまっておきたいです」
そこで、慶人さんから涙が一筋流れた。
「どうしても忘れられない、過去になんてできない!」
「……それでもあなたのために新しい道を必ず見つけてください。それが私の最後の願いです。時間がかかってもいつか……ちゃんと幸せになってください」
私も泣きそうになるのをこらえながら、席を立った。
ハンカチを慶人さんの前に置いていった。
この景色を私は一生忘れないだろう。
凄く景色がきれいで、本の選書も素晴らしくて、私は思わずテンションが上がったけれど、同時に胸がちくりとした。
私、今からこの人を振るんだ。
でも、それは彩人を選ぶことでもある。
私の身も心も彩人だけに預けたいから。
「冴ちゃんが家に来て、毎日が楽しくなった。箱根に行ったときは楽しかったね。一緒に食べたお饅頭、すごくおいしかったよね」
「慶人さん……」
「僕はこれから振られるんだよね。言わなくてもわかるよ。冴ちゃんの顔を見てれば」
「慶人さんが教えてくれたんです。あの時『僕は君が君の思っているよりずっと強くて、迷ったり悩んだりしても、最後には君は答えを出せる人だと思うよ』って」
「うん、僕が言ったね。それでも答えを聞きたくないと言ったら?」
「だとしても、私は慶人さんに伝えなければなりません。慶人さんの人生をこれ以上縛りたくないから」
「……分かった、ちゃんと聞くよ」
慶人さんはカウンター席に座り、私はその横に静かに座った。
「私の手術の時。慶人さんが『俺たちの未来だ』と言って、潰れかけていた彩人の心を取り戻してくれたのを知っています。慶人さんははじめからそういう人でした。優しくて、でもただ優しいだけじゃなくて厳しさも持っていて。こんな人に守られたら素敵だろうって思ったことも正直言うとありました」
「うん……」
「でも私、完璧じゃないからこそ彩人を愛しく思うんです。もう完成している何かじゃなくて、ふたりで一緒に信頼関係を築いていこうと言ってくれた彩人がいいんです。だからごめんなさい。慶人さんとは付き合うことはできません」
「ちゃんと話してくれてありがとう。でも正直に言うと、これで完全に吹っ切れたなんてかっこいいことは言えない」
「分かってます。こんなにも私のことを考えてくれてありがとうございました。慶人さんとの時間は私にとっても、あたたかな思い出としてしまっておきたいです」
そこで、慶人さんから涙が一筋流れた。
「どうしても忘れられない、過去になんてできない!」
「……それでもあなたのために新しい道を必ず見つけてください。それが私の最後の願いです。時間がかかってもいつか……ちゃんと幸せになってください」
私も泣きそうになるのをこらえながら、席を立った。
ハンカチを慶人さんの前に置いていった。
この景色を私は一生忘れないだろう。