いじわる主治医は、私にだけ甘い
タクシーで家に帰ると、玄関で彩人が迎えてくれた。

「よくがんばった……」

ただそれだけを言って抱きしめてくれた。

「うわああああああああん」

私は何もはばからずに泣いていた。
彩人がいる。
それだけで私はこんなにもありのままでいられる。

「彩人……もっと抱きしめて」

言うとおりにしてくれる。

「冴は本当に強い子だ」

「ずびっ、そんなことない……慶人さんを傷つけた」

「相手の未来を守るためになあなあにせず気持ちを伝える強さは、傷つけることとは違う」

「うん。それにね。私には慶人さんが幸せに笑う未来が見えたの。その隣にいるのは自分じゃなくていいってはっきり思った」

「冴、冴が隣にいたいのは俺だろ?」

「……私は彩人を愛しています。やっと言えた。心から」

「俺も冴を愛してる、だからずっと隣にいよう。俺が冴の笑顔を守りたい」

彩人は体をそっと抱き上げて、泣きつかれた私をソファへと運んでくれた。

「私たちこれからやっとスタートだね」

「ああ。普通の恋人っぽいこと、たくさんしような」

「私、頑張ったよね」

「ちゃんとやれた」

「じゃあ俺のものだって証拠をください」

「甘えん坊さんだな、今日の冴は」

シャツのボタンをひとつ、また一つと外して。
下着になっても恥ずかしくなかった。
それよりも、もっと先に進みたくて。
彩人の温もりを求めていた。

「彩人、全部もらって」

「ーー冴、今日は優しくできない」

それから私たちは二人だけの夜を過ごした。
< 58 / 93 >

この作品をシェア

pagetop