いじわる主治医は、私にだけ甘い
次の休み、私から彩人をデートに誘った。
場所は銀座。私らしく地下鉄で移動した。
彩人や慶人さんに話したら、車を用意されちゃうもん。
私は普通のデートをしたかった。

「よしっ」

と小さく呟いた。
今日私の胸には人生を変えるほどの野望を秘めていた。
なんと、私は全財産を口座から下ろしてきていた。

あの時ハワイで貰ったネックレスのお礼をしたくて、銀座に彩人を呼び寄せたからだ。

子宮筋腫の手術の時、慶人さんを振ったときも、いつも胸に光ってたネックレス。私の背中を押してくれていた。

私も彩人に彩人の人生に寄り添えるプレゼントを返したかった。

「どうした? 体がカチコチしてるぞ?」

彩人に肩もみされた。
さすが医者。思わずふにゃ〜となる。

「いや、ちがくて! 今日の私には決意があるんです!」

「なに? 隠さずそろそろ言ってよ」

「このネックレスのお礼を今日は彩人に買います! ……多分、買えると思うので、好きなの言って」

「だんだん声小さくなってるぞ」

「いやぁ、全財産下ろしてきたんだけど、足りるかなって」

「は?! アホか! 全財産下ろしたら、明日からどうするんだよ」

「だって、嬉しかったんだもん! その気持ちに応えたいの!」

「だとしても普通に危ないし、とりあえず銀行に戻せ」

「やだ!」

「わがまま言うな。命令」

「うぅ〜」

「冴様の決意は受け取りましたから」

と撫でられるともう逆らえなくて。
私は渋々近くのATMでお金を戻した。
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