いじわる主治医は、私にだけ甘い
決意してきたのは私だったはずなのに、彩人のプロポーズを前には私は何もかもの決意をポロポロと落としてしまいそうなくらい驚いた。

「せっかく来たんだし、今日決めなくてもいいから、指輪見にいこうぜ」

「うん……」

百貨店を出て、銀座の街を歩く。
日が落ちてキラキラとショーウィンドウや街灯がまるで宝石みたいに輝いていた。

「冴、元気ない」

「いや、胸がいっぱいすぎてさ。現実かなって」

「俺は本気だよ? 例えば最近タバコやめたし。冴の身体に悪いから」

「ありがとう。私、ちゃんと気づいてたよ」

「ぶっちゃけたこと言うと、これから冴とふたりで住む家なんかも探してた」

「え?」

「いくら友人に戻ったとはいえ結婚となれば慶人ともある程度距離があった方が良いし、何より独り占めしたいんだよ」

「……私はそんなに考えてなくて。ただ、お礼がしたくて。彩人の気持ちに応えたくて。でも彩人はずっと先まで私のことを考えていてくれたんだね」

「冴と出会った時に言ったろ? 俺が一生責任を持つって」

「医者としての責任かと思った」

「医者としてだけであそこまで言わないよ」

「そうだよね。彩人は最初から決めてたんだね」

「うん。冴の優しさや、責任感、少しおっちょこちょいなとこも含めて全部愛してる」

「私も、彩人の厳しいとこも甘やかしてくれるとこも、絶対守ってくれるとこも、なのにたまに弱いところも全部愛してる」

「両思い、だな」

「だね」

そう言いながら、街灯の中、手を繋いで歩いた。

いつまでも消えることのない思い出と共に。

胸がポカポカとして、世界はキラキラと輝いていた。


「だから俺達はずっと一緒にいよう」


「うんっ」
< 66 / 93 >

この作品をシェア

pagetop