いじわる主治医は、私にだけ甘い
その日の仕事終わり、桐ヶ谷産婦人科にやってきた。
この間来たばかりな気がするのに、また来ることになるとは。

「今日の彩人先生……妙に優しくて怖かったわ。『体重、少しくらい大丈夫ですよ、よく頑張ってます』って」

「あら、慶人先生はなんか妙に怒ってたわ。『なんですかこの増え方は。栄養指導いれますね!』って」

「もしかして、入れ替わってる!?」

いや多分、入れ替わってはない。
各々複雑にさせてるのは私のせい。

「桐ヶ谷 冴さん、第1診察室へどうぞ」

そうか、当たり前だけど苗字が変わってるななんて思いながら、診察室に向かう。

「こんにちは」

「こんにちは。先生、苗字、前のままの方がやりやすいならそうして下さい」

「気にしないよ俺は。早速だけどエコーをと思ってるんだが」

そこでカーテンがシャッと音を立てて開いて、慶人さんが出てきた。

「冴さんさえよければ、僕も一緒に確認していいかな」

ちょっと殺気立った慶人さん……。

「もちろん大丈夫です」

「つわりが始まってるってことは思ってるより妊娠が週数経ってる可能性もあるからね。心配してる」

「心配かけてすみません」

「とにかくエコーをしてみてみよう。隣の部屋で準備してくれるかな?」

「はい」

慶人さんの言う通り、下着をはずし、内診台へと上がった。
いよいよという迷いのある気持ちと覚悟を決めなきゃという気持ちが入り交じっていた。
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