キミと歌姫はじめました!
零は少しだけ考えるように視線を落としてから、ふっと小さく笑った。
「……なに」
「有栖一人だったら、無理かもね」
有栖は一瞬きょとんとする。
「え……」
でもすぐに、むっとした顔になる。
「それ、どういう意味――」
「でも」
零は言葉を遮るように続けた。
その声は、いつも通り穏やかで。
でも、不思議と強かった。
「僕たち、二人でしょ」
有栖の言葉が止まる。
「有栖の声と、僕の音」
ゆっくりと、言い聞かせるように。
「今まで、それでやってきたじゃん」
思い出す。
最初の動画。
全然再生されなかった日々。
それでも楽しくて、続けてきた時間。
ずっと、隣には零がいた。
「……でも、それとライブは別でしょ」
「同じだよ」
即答だった。
「やることは変わんない。歌って、それを届けるだけ」
「そんな簡単に言うけどさぁ……!」
「簡単だよ」
零は少しだけ笑う。
「だって」
一拍置いて。
まっすぐ、有栖を見る。
「僕たち、二人揃ったら最強じゃん」
その言葉に、有栖は何も言えなくなった。
根拠なんて、どこにもないはずなのに。
どうしてか、否定できない。
胸の奥が、じんわり熱くなる。
「あーもー、ずるい」
小さく呟く。
「何が?」
「そういうことを、ケロッとした顔で言うところ」
零がきょとんとした顔をする。
有栖はにっと笑って、顔を上げた。
「……やるよ」
その目は、もう迷っていなかった。
「どうせやるなら、最高のやつ作ろ」
「うん」
「絶対成功させるからね」
「うん」
零はいつも通り、穏やかに頷く。
その表情に、有栖は少しだけ安心して。
大きく息を吸った。
「よぉーっし!新曲作るぞ!!」
こうして――
2人の無謀すぎる二週間が、始まった。
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