キミと歌姫はじめました!
* * *
2人で作ったこの曲は、どこを切り取っても思い入れに溢れていた。
サビも、Aメロも、間奏も。
ただの音じゃない。
全部に「そのときの2人」が残っている。
「ここ、最初めっちゃ詰まってたよね」
「うん、何も出なかった」
「でも今普通に歌えてるのすごくない?」
「それは有栖のおかげ」
「え、やった。褒められた」
笑いながらも、手は止まらない。
歌うのが、楽しかった。
怖さよりも、迷いよりも。
今はただ、音が気持ちいい。
2人でひとつの曲を鳴らしている、その感覚だけがそこにあった。
ライブまで、あと少し。
もう、準備はできている気がした。
* * *
そして――迎えた前日。
ドームは少し都心の方にあるため、
前日に現地入りして一泊することになっていた。
朝からスタッフさんと何度も電話で最終確認をしながら、
2人は駅へ向かった。
電車に揺られる車内。
いつもより少しだけ混んだ車内のざわめきの中で、
2人は無言だった。
有栖は窓の外を眺めながら、
イヤホンもつけずにぼんやりと景色を追っている。
零は背中のギターケースを一度持ち直すと、
前に抱え直してつり革を握った。
いつもより少しだけ、強く。
(いよいよ明日、かぁ)
言葉にしないまま、同じことを2人とも考えている。
電車の揺れに合わせて、ギターケースが小さく軋む音を立てる。
その音すら、やけに現実的だった。
「……なんかさ」
有栖がぽつりと呟く。零が視線だけで応えた。
「明日って感じ、しないね」
「この2週間、あっという間だったもんね」
その一言に全部が詰まっている。
まだ実感がない。
でも、もう戻れない。
駅をいくつか乗り継ぎ、目的のエリアへ近づくにつれて、
空気が少しずつ変わっていく。
高い建物。
大きな広告。
人の流れ。
その中に、2人は紛れ込んでいく。
「ホテル、ここで合ってる?」
「たぶん?」
スマホを見ながら歩く有栖の横で、零がギターケースを持ち直す。
いつも通りのはずなのに、どこか落ち着かない。
それでも――
2人は並んで歩き続けた。
明日、その先にあるステージへ向かうために。
2人で作ったこの曲は、どこを切り取っても思い入れに溢れていた。
サビも、Aメロも、間奏も。
ただの音じゃない。
全部に「そのときの2人」が残っている。
「ここ、最初めっちゃ詰まってたよね」
「うん、何も出なかった」
「でも今普通に歌えてるのすごくない?」
「それは有栖のおかげ」
「え、やった。褒められた」
笑いながらも、手は止まらない。
歌うのが、楽しかった。
怖さよりも、迷いよりも。
今はただ、音が気持ちいい。
2人でひとつの曲を鳴らしている、その感覚だけがそこにあった。
ライブまで、あと少し。
もう、準備はできている気がした。
* * *
そして――迎えた前日。
ドームは少し都心の方にあるため、
前日に現地入りして一泊することになっていた。
朝からスタッフさんと何度も電話で最終確認をしながら、
2人は駅へ向かった。
電車に揺られる車内。
いつもより少しだけ混んだ車内のざわめきの中で、
2人は無言だった。
有栖は窓の外を眺めながら、
イヤホンもつけずにぼんやりと景色を追っている。
零は背中のギターケースを一度持ち直すと、
前に抱え直してつり革を握った。
いつもより少しだけ、強く。
(いよいよ明日、かぁ)
言葉にしないまま、同じことを2人とも考えている。
電車の揺れに合わせて、ギターケースが小さく軋む音を立てる。
その音すら、やけに現実的だった。
「……なんかさ」
有栖がぽつりと呟く。零が視線だけで応えた。
「明日って感じ、しないね」
「この2週間、あっという間だったもんね」
その一言に全部が詰まっている。
まだ実感がない。
でも、もう戻れない。
駅をいくつか乗り継ぎ、目的のエリアへ近づくにつれて、
空気が少しずつ変わっていく。
高い建物。
大きな広告。
人の流れ。
その中に、2人は紛れ込んでいく。
「ホテル、ここで合ってる?」
「たぶん?」
スマホを見ながら歩く有栖の横で、零がギターケースを持ち直す。
いつも通りのはずなのに、どこか落ち着かない。
それでも――
2人は並んで歩き続けた。
明日、その先にあるステージへ向かうために。