幼なじみの救命士は、再会した初恋の私を今度こそ逃がさない 〜拒否権なしの溺愛同居〜
高三の冬休み。
遥希の進路は、消防学校に入学と決まっていた。
終業式も終わり、そそくさと靴を履き替えたとき、花島に声をかけられた。
 
「年末年始は受験で会えないから、遥希の家に行きたい」
「嫌や。俺ん家はあかん」

きっぱりと断るも、食い下がる花島。
反動でカールしているポニーテールが揺れる。 
 
「なんで?!いっつもダメっていうじゃん!」
「……幼なじみが来るから」
「また、めいちゃん……?……遥希の彼女はあたしだよね……」

他の生徒たちの不躾な視線にさらされるも、花島は引かなかった。  
遥希は捕まれた腕に、溜め息を被せる。
  
「……付き合うとき、ゆうたやろ?」
「恋人らしいことしないってやつでしょ?……分かってる……」

上靴を戻し、遥希の冷めた視線が刺さる。
花島が言葉の圧に負けじと堪えるも、ぽろっと一粒落ちていく。
  
「泣くなや……」
「好きな人がいてもいいって言った……でも、ほんとに、ちょっとでも……好きの可能性ない?」
「……ない、そこだけは変わらん」
 
言い淀みのない遥希の答えに、和可子は唇を噛んで俯いた。
 
「……もうすぐ終わるかもしれないのに」
「は?」
「受験終わったら、遥希……消防学校で忙しくなるじゃん」
「……」
「だから、少しだけでいいから、一緒にいたい」
「……和可子」
「部屋、上がるだけ。変なことしないから」
「……ほんま、お前なぁ」

遥希はそれだけ言うと、校門に向かって歩きはじめる。
慌てて花島も追いかけていった。  
 
結局、花島を自室にあげた遥希。
トイレに行っていて、芽依子の声に気付かなかった。
 
「ね……隣に座ってもいいでしょ?遥希」
「……はぁ……好きにしたら?」
 
すると、遥希の肩に手を置く。
フローラルな匂いと一緒に軽く唇がふれる。
 
「おいっ……和可子っ」
  
驚いた瞳に移る彼女は、いたずらが成功したみたいに嬉しそうだった。
が、急に表情が強張り、瞳が陰る。
  
「ねっ……もう一回しよ?」
 
了承を待たずに、花島はもう一度唇を押し当てる。
 
「……お前なぁ――」
 
言いかけた遥希が、瞬間、花島を引き剥がした。
ぱたぱたとかけ降りていく小さな足音。       
いそいでリビングに行くと、清子の姿しかなかった。
 
「遥希?家におったんかいな」
「めいっ……来てたやろっ?」
「……あんた、何したん?」
「は……?」
「めいちゃん、泣きながら帰ってったで」
 
清子は、遥希の後ろについてきた花島を見やる。
そして何となく状況を読んだのか、ピシャリと言い放つ。
 
「お母さんはめいちゃんの味方やから。あんたは反省しとき」      

それから、芽依子に避け始められる。
誤解をといて真相を説明したくても――
消防学校での寮生活、卒業後はすぐに配属され目まぐるしい日々。
少し余裕が出来たものの、芽依子も受験や部活動などで忙しいと聞いていた。
 
親同士が仲良くて、近況もわかっていて、遥希は芽依子が離れていくとは微塵もない。
そう、心の奥の奥で、絶対的な自信に慢心していた。         
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