私に憧れていた年下社長と出張一夜、理性が崩れて溺愛が止まりません
逃げ場のない空間。

それだけで、心臓が妙に騒ぎ出す。

「……何か、ございましたか?」

平静を装って問いかける。

けれど、彼はすぐには答えなかった。

ほんの数秒の沈黙。そのあと、静かに口を開く。

「……お見合いの話、聞いてしまいました」

その一言で、空気が変わる。

胸の奥が、きゅっと締め付けられた。

「……そう、ですか」

視線を逸らす。知られたくなかった。

よりによって、この人にだけは。

「その話、受けるんですか」

淡々とした問い。

なのに、その奥にわずかな熱が滲んでいる。

試すような、押さえ込んだ感情。

「……まだ、分かりません」

正直に答えるしかなかった。

曖昧なまま、逃げるように。

「ですが……いい方だと聞いていますし」

自分でも驚くほど、事務的な言い方になってしまう。
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