私に憧れていた年下社長と出張一夜、理性が崩れて溺愛が止まりません
気づけば、声に出していた。

けれど、続く言葉が見つからない。

「どうしました?」

すぐに返ってくる、落ち着いた声音。

仕事の顔。完璧な距離。

「……いえ、失礼いたしました」

結局、何も言えずに引き下がる。

何を言おうとしたのか、自分でも分からなかった。

ただ、ほんの少しだけ。

このままでいいのかと、問いかけたかったのかもしれない。

――でも、それは私の役割じゃない。

視線を前に戻す。車は静かに走り続けている。

運転席と後部座席の間には、透明な隔たりがある。

けれど、それ以上に。

隣にいるこの人との間に、見えない線が引かれている気がした。

触れてはいけない境界線。越えてはいけない距離。

それを守っているのは、きっと――私だけじゃない。

ふと、隣を見る。
< 8 / 15 >

この作品をシェア

pagetop