私に憧れていた年下社長と出張一夜、理性が崩れて溺愛が止まりません
彼は窓の外を見ていた。

その横顔は相変わらず整っていて、何を考えているのか分からない。

けれど一瞬だけ、視線がこちらに向いた。

ぶつかる。ほんの一瞬。

逃げるように逸らされることはなかった。

ただ、静かに、見つめられる。

その視線に、なぜか息が詰まる。

何も言っていないのに。

何も変わっていないはずなのに。

空気だけが、少しずつ変わっていく。

「……京子さん」

名前を呼ばれる。

いつもと同じ呼び方。

それなのに、どこか低く響く声。

「はい」

短く返すと、彼はわずかに視線を細めた。

何かを言おうとして――やめたように見える。

結局、それだけ。また距離が戻る。

静かなままの車内。

けれど――嵐の前って、こういう感じなのかもしれない。
< 9 / 15 >

この作品をシェア

pagetop