経済学部一の人気者が同じ学部の大人しい女の子に一目惚れした理由│Quiet Strength×Soft Strength
 その後にも幾つものやり取りがあった。その他全員が一言も発さずに二人の会話を聞いている。いつものゆったりとした受けの聞き方ではない。一言一句聞き逃すまいという前傾姿勢だ。こんなにも具体的に、聞いたことを確実に答えてくれる人間はいなかった。当然だ。誰一人アナリストの目を持って社内の数字を見てはいないのだから。それができればこんなにも外の考えが手に取るように分かるのかと鳥肌が立って手の平が湿った。

「良く分かった。いやー、打てば響く。楽しかったよ」

 一時間程二人で議論をして、やがてすっきりした表情で財務最高責任者は笑った。彼は経営企画部の頂点だ。及第点は貰えたらしいと司はほっとする。

「ありがとうございます。…あの…」

 他を置き去りにしてしまったことには途中から気付いてはいた。けれど自分にどうにかすることなどできようか。一段落して周囲を見回した司に上司は笑う。

「気にしなくて良いよ。また話を聞かせてくれ。というか、色々教えて貰うことになるな。これから宜しく頼むよ。いやー…アナリストが社内にいるというのは良いねぇ!」

 ご機嫌で笑った上司からその後重宝され、可愛がられ、頼られ、あっという間に出世していくのはこの後の話。
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