経済学部一の人気者が同じ学部の大人しい女の子に一目惚れした理由│Quiet Strength×Soft Strength
「今までよりも前向きな言葉ではありますが、この書き方では何も起こっていないと同じレベルです。投資家が欲しいのは具体性です。いつ、幾ら、何パーセント。それをイメージさせるように書かなければ真実味がありません。具体的な数字は書かなくとも、例えば数か月以内という言葉やフェーズの明示、利益に関しても幾らかではなく儲けの効率変化や市場の大きさの匂わせ、パーセントなら競合他社とのバランスの変化や新市場開拓創出」

 完全に自分のものにした力を揮う新入社員は、迷いも躊躇いも無く役員に進言する。だからそれは年齢も役職も越えて相手に届く。まるでプライベートな相談に乗って貰っているかのように、財務最高責任者はうんうんと司の言葉に頷いた。

「株価を上げるには、これは何かあると追ってもらえるように仕掛け、適宜情報提供する必要があります。軸のあるストーリーを提供する為、最初からある程度の道筋を整えて下さい。今回は最初のリリースなので、課題の指摘と大きな変化の予兆を匂わせる事が定石です」

「…うん。良く分かった」

 あの後現場にも確認し、司の言った通りの経過を進んでいると判明した。こちらが期待すればする程きつい現場の気持ちも分かるし、地道に頑張ってくれた彼等には注意ではなく感謝の言葉を伝えた。そうできたのは司のお陰で手遅れにならなかったことが一番大きい。そしてこれからの会社の動きを説明し、今後は逐一報告をするように指示した。

 その後は順調な経過と見込みの報告が上がってくる。これは間違いなく強気にいっても良いと、あの面子で頷き合った。社長にも役員一同で進言し、会社は舵を大きく切る決断をした。根拠も熱意も態勢も全て揃えた彼等の言葉に社長の決断も早かった。

 それでも初めての事にIR部は守備的で、また、未知だ。だから司にそれとなく導かせる為に自分自ら間に立つことを決めた。IR部には自分の指示として動いて貰うつもりだが、いつか本当の事を知る時が来るだろう。それがこの若造の仕業と知ったら苦虫を嚙み潰すだろうか。それとも尊敬の念を抱くのだろうか。

 いや、危ない危ない。どこから情報が外に漏れるか分からないのだ。やっぱり暫くは経営企画部で大人しくしていてもらおう。そんな事を思いながら上司は頷いた。
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